Hotels for Art Lovers
アートを楽しむホテル

瀬戸内と別府、そしてヨーロッパにある、敷地内でアートが楽しめるホテルをご紹介する。感性を刺激する非日常空間でのステイを存分にご満喫ください。

瀬戸内の海と建築のユニークなコラボ
Simose Art Garden Villa
シモセ アート ガーデン ヴィラ(広島県大竹市)





①広島県大竹市に誕生した「Simose Art Gaden Villa」に併設の下瀬美術館。カラフルな可動展示室が瀬戸内の島々と呼応するように並ぶ。②瀬戸内を望む丘に10棟の個性的なヴィラが点在。③「壁のない家」の名前の通り、周囲の自然に包まれて非日常の時間を過ごせるヴィラ。④「SIMOSE」は、瀬戸内のスローな空気の中で、建築とアートと食を満喫できる複合施設だ。

Simose Art Garden Villa





①約100㎡のヴィラ「紙の家」には110本の再生紙の紙管が使われており、リズミカルで軽やかな空間を創り出している。②「ダブルルーフの家」は山中湖の別荘をヴィラに設計し直している。海と空と緑に浮かぶテラスに加え、螺旋階段の上にはジャグジーとデイベッドが備わる。③~④.約115㎡の「壁のない家」は、すべての壁をなくし、ガラスの引き戸で空間を区切った開放感抜群のヴィラ。

瀬戸内の新アートスポットに建築美を楽しむオーベルジュ

2023年4月、宮島を望む広島県の海沿いのエリアに、建築とアートと食の複合施設「SIMOSE」がグランドオープンした。この施設は宿泊施設「シモセ アート ガーデン ヴィラ」とレストラン、美術館で構成されており、プリツカー賞を受賞した日本人建築家・坂 茂が施設全体の設計を担当している。
「シモセ アート ガーデン ヴィラ」のコンセプトは、「海辺の建築作品に泊まる。」。ヴィラの敷地内は、木立の中に点在する「森のヴィラ」と空を映し出す水盤に面した「水辺のヴィラ」の2つのエリアに分かれており、各々のエリアに全10棟の個性溢れるオールスイートのヴィラが誕生した。坂氏の代名詞ともいうべき主構造に紙管を使った「紙の家」など、これまで彼が手掛けてきた別荘建築をリメイクしたヴィラをはじめ、すべての部屋に瀬戸内を一望できるテラスを備えている。
また、海を見渡すレストランでは、かつて東京・白金台「OZAWA」でフランス料理界をけん引してきた小沢貴彦シェフ監修による、地元の美味をふんだんに取り入れたフランス料理を堪能することができる。

Simose Art Garden Villa







①下瀬美術館のエントランス。坂氏らしい木を多用した光溢れる軽やかな空間。②併設のレストラン「SIMOSE French Restaurant」では、時とともに色を変えていく瀬戸内の風景を眺めながらフランス料理を堪能。③エミール・ガレの作品にちなんだガーデン「エミール・ガレの庭」。④美術館のコレクションのひとつエミール・ガレ「ハートの涙 《ケマンソウ》」。⑤周囲の景観を映す美術館の外観。⑥色鮮やかな可動展示室がユーモラスな雰囲気を演出。

建物そのものがアート 瀬戸内の風景に溶け込む美術館

併設の下瀬美術館は、建築資材の総合メーカー丸井産業の創業家、下瀬家が半世紀に渡り収集してきたコレクション約500点を所蔵。大木平蔵の京人形やエミール・ガレの工芸品をはじめ、横山大観やマティスといった日本と西洋の近代絵画まで多岐に渡る。坂氏が瀬戸内海の島々にインスピレーションを受けて設計した可動展示室など、美術館そのものがアートであり、この特別な空間でアート三昧を満喫していただける。
また、ガレの作品のモチーフになっている四季の草花に彩られたガーデン「エミール・ガレの庭」や、瀬戸内の多島美とともに工場夜景を望む「望洋テラス」では、ヴィラの宿泊ゲストのみが利用できる時間が設定されており、誰にも邪魔されずのどかな瀬戸内の風景と坂建築とのユニークなコラボを楽しむことができる。
瀬戸内の豊かな自然に囲まれ、建築美とグルメとアートに彩られた新たなアートスポットに、ぜひ訪れてみてはいかがだろうか。

Information

Simose Art Garden Villa

広島県大竹市晴海2丁目10-50
TEL 0827-93-0101
www.artsimose.jp

世界に誇る“アートの島”で、日本発のアートを
Naoshima Ryokan Roka
直島旅館 ろ霞(香川県直島)












①庭園には、国内外で活躍中の名和晃平のオブジェがある枯山水や水田も取り入れられている。②一室のみの特別室、ろ霞スイート。淡路島の土を用いた土壁や土佐和紙など、瀬戸内近隣の天然素材が多く取り入れられた、贅沢かつ軽やかな居心地のよい空間。③気候の温暖なこの季節は、ぜひ窓を開け放って解放感抜群の入浴を楽しみたい。④名和晃平の写真作品。⑤日本のアーティストの絵画作品などがレストランや客室に飾られている。⑥宿の名の由来にもなっている大きな囲炉裏。⑦レストランでは瀬戸内の新鮮な魚を使った1日9食限定の「寿司会席」も提供。
©Kenji Kudo

アートが彩る「和」の上質空間で穏やかに流れる里山の時間を

アート好きの方が瀬戸内エリアを訪れるなら、やはり直島は外せないだろう。島のあちこちに点在するアート巡りの拠点にも相応しい直島初の本格旅館が、2022年春にオープンした。岡山の老舗旅館が手掛ける「直島旅館 ろ霞」は、のどかな里山の風景に調和する平屋造りの和モダンな宿だ。客室はオールスイートの贅沢な空間を誇り、各部屋に庭園と緑豊かな裏山を望む露天風呂と木の香りが心地よいテラスを備えている。
この宿は、世界中のアートファンが訪れる直島で「アートのもとに集い、豊かな時間が紡がれる囲炉裏のような場所」をコンセプトとしている。心安らぐおもてなしはもちろん、敷地内の様々な場所で日本の現代アート作品と出合える。「FEATURED ARTISTS」と題して期間限定で若手アーティストを取り上げ、一部作品の抽選販売も行っている。4月21日からはその第三弾として、写真をペインティングに転写する作風で知られる岡田佑里奈の作品が客室にて公開されており、開業1周年を記念して、特別にゲスト以外の方のオンラインでの購入申し込みも受け付けている。
これからの季節は、宿で貸し出しているスタイリッシュな電動自転車で島内探検に出かけ、宿に戻って地元の美味満載の夕食を楽しんだ後は、屋外に設けられた囲炉裏を囲んでのんびりドリンクを片手に心安らぐ時間を過ごしてはいかがだろうか。居合わせたゲストとのアート談義もきっと盛り上がることだろう。

Information

直島旅館 ろ霞

香川県香川郡直島町1,234
TEL 087-899-2356
https://roka.voyage/

アートが生まれる街、別府の新しい温泉宿
Galleria Midobaru
ガレリア御堂原(大分県別府温泉)












①吹き抜けのロビーにある大巻伸嗣のオブジェは、時とともに異なる表情を見せてくれる。②鈴木ヒラクが別府で制作したドローイング「ゆらぎから光へ」。③個性的なホテル外観。ホテルの広報担当者は「このシルエットを見たら別府の地を思い出してもらえるようなものができた」と語る。④大分県発、加藤亮と兒玉順平による美術ユニット、オレクトロニカの作品。⑤東京と別府を拠点に活動を続ける泉イネの絵画作品。⑥カフェ&BARには、別府出身の写真家、草本利枝の作品が。⑦35室ある客室は全室オーシャンビュー。インテリアデザインをはじめクリエイティブディレクションはgrafが担当。

海を見下ろすホテルでここでしか出合えないアートを

世界屈指の温泉地、別府に、従来の温泉宿とは一線を画す、アートファンに特におすすめのホテルがある。「ガレリア御堂原」は別府の街と海を見下ろす高台に位置し、全客室に抜群の眺望を誇る堀田温泉の源泉かけ流しの半露天風呂を備えている。客室も含め、館内のいたるところで大巻伸嗣、鈴木ヒラクら12組のアーティストによる現代アートと出合える。
このホテルは、別府市を拠点とするリゾート開発会社の「世界中のまだ別府を訪れたことのない方たちが、ここを訪れたくなるようなものを創る」という熱い思いから生まれた。別府の大地の力強さを体現したような赤茶色をした個性的なホテルの建物は、大分県を中心に活躍中のDABURA.mが設計を担当した。キュレーションは、これまで別府で国際芸術祭などを企画してきたNPO団体、BEPPU PROJECTが行っており、選定されたアーティストの中には、このエリアに縁のある方々も多い。館内にあるアート作品すべてが、実際にアーティスト自身が別府に滞在し、この土地にインスピレーションを得て制作した新作だそうだ。 
また、ホテルのレストラン「THE PEAK」では、九州エリアならではの食材を使い、希少な石窯で素材そのものの味を引き出した料理を味わえる。ここでしか体験できない出合いの数々を提供してくれるホテルにて、別府が誇る上質な湯に浸かり、唯一無二のアート空間を散策し、存分に感性を開く豊かな休日をご満喫いただきたい。

Information

ガレリア御堂原

大分県別府市堀田6組
TEL 0977-76-5303
https://beppu-galleria-midobaru.jp/

France
南仏のワイナリーで、世界中の才能と出合う
Villa La Coste
ヴィラ・ラ・コスト(フランス・プロヴァンス)




  • ①「ヴィラ・ラ・コスト」を擁するワイナリー「シャトー・ラ・コスト」には、ワイナリーとアートと建築が共存し調和している。写真はルイーズ・ブルジョワの蜘蛛の彫刻。②建築家・安藤忠雄による「シャトー・ラ・コスト」のゲート。このアートセンター構想全体のプラン設計も安藤が担当。③ワイン醸造所の設計は、ルーヴル・アブダビを手掛けたジャン・ヌーヴェルが担当。©Jean Nouvel ADAGO Paris 2016 photograph ©Andrew Pattman

    現代アートと建築に彩られたオーガニックなワイナリーに滞在

    セザンヌが愛した南フランスのエクス・アン・プロヴァンスから車で約30分、最新鋭の設備でワイン造りに取り組むバイオダイナミック農法のワイナリー「シャトー・ラ・コスト」は、17世紀から続く歴史あるワイナリーだ。2004年にこのワイナリーを購入したアイルランドの実業家パディ・マッキレン氏はアートコレクターでもあり、世界中の名だたるアーティストや建築家をこの地に招き、作品の制作を依頼してきた。ここではフランク・ゲーリー、安藤忠雄、艾未未(アイウェイウェイ)、レンゾ・ピアノ、ダミアン・ハースト、ジャン・ヌーヴェル、宮島達男、杉本博司らの現代アートや建築を鑑賞できる。ワイナリーの葡萄畑や森の風景に溶け込んで点在する36の主要な現代アート作品のほか、3つのギャラリースペースも設けられており、アート好きにはたまらないデスティネーション・リゾートだ。
    「シャトー・ラ・コスト」の丘の中腹には、併設のスモールラグジュアリーホテル「ヴィラ・ラ・コスト」がある。花とハーブの庭園に彩られた28の洗練されたヴィラスイートは広々としたプライベートテラスを備え、ワイナリーの葡萄畑や渓谷の雄大な眺めを堪能できる。ホテル内には三つ星シェフが腕を振るうフォーマルなフランス料理のレストランがあり、さらにヴィラのゲストは、「シャトー・ラ・コスト」の4つのレストランも利用することができる。アート鑑賞のみならず、プロヴァンスの美味を堪能しつつ、ワイナリーで醸造された上質なワインもぜひ味わっていただきたい。

    Villa La Coste














    ①アメリカのアーティスト、トム・シャノン作「Drop」。©Tom Shannon 2015 ②プロヴァンスらしい優雅さが漂うホテル「ヴィラ・ラ・コスト」。③フランク・ゲーリー設計の野外音楽シアター「Pavillon de Musique (Intérieur)」。©Gehry Partners et Château La Coste 2016. Photograph ©Andrew Pattman 2016 ④「シャトー・ラ・コスト」には安藤忠雄の名を冠したレストランも。中庭には杉本博司のオブジェが。©Richard Haughton ⑤~⑥「ヴィラ・ラ・コスト」のゲストは、無料で「シャトー・ラ・コスト」のアート&アーキテクチャーツアーに参加できる。⑦ホテルの窓に広がるワイナリーの風景に心癒される。⑧「シャトー・ラ・コスト」のワインは、京都祇園の姉妹ホテル「The Shinmonzen」でも提供されている。©Richard Haughton。

    Information

    Villa La Coste

    2750 Route de la Cride, 13610 Le Puy-Sainte-Réparade, France
    TEL +33-4-4250-5000
    www.villalacoste.com