ザ・ラルー・ホテルからの招待状

台湾最大の淡水湖である日月潭。湖の北側が太陽、南側が月の形をしていることからこの名が付けられた。
その美しい景観から、国立風景区に指定されている人気の観光地。
日月潭の夕日は絶景と言われ、台湾八景のひとつに数えられている。

 

「ザ・ラルー・ホテル・日月潭(リーユエタン)」は台湾の景勝地として有名な湖「日月潭」に佇む。百年以上の歴史を誇り「涵碧楼(ハンビロウ)」と呼ばれた木造のゲストハウスが由来で、昭和天皇が台湾行啓の際に休息所としてお使いになられるなど由緒正しい建物であった。さらには初代総統の蒋介石の別荘として使われ、日本の首相をはじめ諸外国の国王や元首が訪れた 歴史と伝統に彩られた建物と自然豊かな湖、日月潭は、台湾の誇りとなっている。
その美しい湖、日月潭に浮かぶ小島は古くから暮らすサオ族の言い伝えで「拉魯(ラル)=神聖な島」と呼ばれていた。伝承では、一頭の白鹿を追いながらナイフで木の皮を切り落として道しるべとしながら深い山を歩いていると、突然気高い山々と美しい湖(日月潭)が目の前に現れ、追い求めていた白鹿は一本のアカギ(の木)に化けて小島(ラル)に 高々とそびえたという。これをきっかけにサオ族は日月潭周辺に移り住み集落を構えた。代々その伝承が語り継がれ、アカギの木は彼らの最も神聖な木として崇められてきた。
自然畏敬や祖霊信仰に深く根ざす彼らの文化伝承や景観保護を担いながらこれまで数々のVIPやセレブリティに愛されてきた台湾を代表するスモールラグジュアリーなホテル「ザ・ラルー・ホテル」ブランドの中国本土二軒目となるホテルが「ザ・ラルー・南京」だ。
これまでのザ・ラルー・ホテルのブランドイメージを継承しながら、中国の古都にふさわしく伝統と革新が見事に融合し、悠久の大河・揚子江を望む地に「ザ・ラルー・南京」は2018年4月に開業した。
女性奏者が奏でる凛とした音色に誘われ、エントランスの先の緩やかな階段を登ると柔らかな日差しが差し込む吹き抜けの美空間に出迎えられる。磨き込まれた大理石のロビーはアートギャラリーのようでその中心には煌びやかに装飾がなされた一本の古木のオブジェがある。

 

こだわり抜いたデザイン

ザ・ラルー・ホテルのデザインには創業者の賴(Ray)氏の理念が凝縮されている。サステナブルの発想で、後世に遺す文化的価値のある建物として表現したのが台湾の日月潭の山の上に鎮座する「ザ・ラルー・日月潭」。賴氏はこれまで世界中いくつものリゾートに滞在し、いつか自分がホテルを建てる時にはこのイメージで作りたいと考えていた。ホテルのデザイナーを調べてみると偶然にも一人のオーストラリア人デザイナーの名前がリストアップされた。その名はケリー・ヒル。彼の名前は知らずとも彼の手がけたホテルには馴染みがあるはず。
ケリー・ヒルといえば「アマン」。彼は、近年東京にオープンした「アマン東京」や伊勢志摩の「アマネム」、バリ島に始まりブータンやスリランカ、カンボジアなどの地でアマンとのコラボレーションを展開してきた。それらのコンセプトやデザインに惚れ込んだ賴氏の熱烈なラブコールに応え、ケリー氏が仕上げたのが「ザ・ラルー・日月潭」である。彼の建築作品に共通するのは「ローカリティを追求し、文化を理解し、周辺の環境に寄り添い風土に溶け込む空間を作ること」。こうして賴氏が日月潭で表現したかった文化と伝統をホテルに宿すという夢が叶ったのだった。
ケリー氏最後の仕事とされるのが「ザ・ラルー・青島」。これは中国初のラルー・ホテルで2014年に開業した。それに続く2軒目が「ザ・ラルー・南京」なのだがケリー氏は完成を見届けることなく、昨年8月日に故郷のオーストラリア・パースで75歳の生涯を閉じた。ケリー氏は自身の設計へのこだわりについて生前このように語っていた。「絶対過去の自分の真似はしない」。その言葉通り、彼が手がけたどのアマンも、そしてザ・ラルーも斬新な発想とデザインによってその土地に息吹を吹き込まれ、生きたホテルとして唯一無二の存在となっている。「建築そのものが主張してはいけない」というケリー氏のデザイン哲学を継承し誕生したのがザ・ラルー・ホテル・南京なのだ。
滞在して感じるのは水や木々に囲まれる癒しと天然素材やアンティークの調度品に包まれる安心感。日中は日差しを柔らかな木漏れ日にする工夫がなされ、日が暮れると建物全体がドラマチックに変容する間接照明の妙。日の出から夜の帳が降りるその時まで光と空間を見事に演出している。
華美な装飾は極力控えられていて、アースカラーの配色で纏められた室内は無駄のないレイアウトにデザインされている。バスルームには大理石のタイル、ベッドルームの床はフローリングになっていて天然の素材が随所に使われているので都的な冷たさは感じない。
プライベートテラスに出て悠々と流れる揚子江の流れと澄んだ空気に触れると中国大陸の広大さを肌で感じることができる。最上階には屋根付きの屋外ラウンジがあり、遠くの山並みに沈む雄大な夕陽を眺めながら中国茶を頂くサンセットタイムは格別だ。

全室スイート。室内の窓からは揚子江の美しい景観が望める。

明るく開放的なバスルームは機能的で使いやすくすっきりとした美しいデザイン。

 

美食と特別な体験 瞬く間に虜にされてしまう極上の料理

蒋介石の料理番の直系弟子の黄俊斌シェフは、アジアトップシェフの一人に選ばれた経歴を持つ料理人。台湾料理、蒋介石プライベート料理、民国料理(民国時期1912〜1949年南京で流行った料理)と淮揚料理などを黄シェフと厨房のチームが一皿一皿を芸術的に彩る。人数に合わせた個室も用意されているので家族や友人、カップルでも満 足できる。
ザ・ラルー・南京では食以外にも特別な体験が待っている。台湾最高峰のお茶と共に優雅なティータイムを満喫したり、地元のアーティストにレクチャーを受けながらの青竹彫刻体験などだ。専属の先生によるヨガ や太極拳はこの地でしか体験できない忘れられない時間となるはず。
週末の昼下がり、あるバースデイパーティーがガーデンテラスで催されていた。まるでウエディングセレモニーのような演出と豪華さに圧倒されたが、その主役が地元の子供だったのにはさらに驚いた。休日の午後に広い芝生の上で繰り広げられたガーデンパーティーは、無邪気に走り回る地元の子供たちの歓声と大人たちの幸せそうな微笑みに満ちていた。
ホテルは旅行者が宿泊するだけの空間ではなく、地元の人たちの文化や伝統を留めておく空間となり、訪れるゲストは無形の空気感を味わうことによって一層旅に深みが増すのだろう。デザインやサービス、居心地の良い客室といったピースがバランスよく配置されることが優れたホテルの条件だとすれば、ザ・ラルー・ 南京にはもう一つ、伝承と言うピースが加わる。

黄シェフによる芸術的な料理。

見晴らしが良く広々として気持ちの良いテラス。

専属講師による太極拳を体験する。

優雅なティータイムを満喫。

 

時を超え変節を重ねながらも変わらぬ物を「伝統」と呼ぶのなら台湾部族の言い伝えが姿を変えながらも伝承される日月潭の物語はそれに値する。ザ・ラルー・ホテルは旅人と地元の人々にとっての宿り木となり次世代へ「伝統」を語り伝えることを担っているのかもしれない。

 

Information

ザ・ラルー南京

TEL +86-025-6888-9888

http://nj.thelalu.com/