PAVONE特別インタビュー 新時代を切り拓く賢者たちの言葉

令和が始まってすでに半年。時代は移り変わり、取り巻く世界も変わっていく。誰もが否応なく世界と関わって生きていかなくてはならない時代。自分たちはそのグローバリズムの変化についていけているのだろうか。海外から日本に向けてマーケットを見ている企業、そして日本という枠を越えて世界に向かう企業、世界の企業が求める人を探し出す企業の代表達にお話を伺った。

撮影:大橋マサヒロ・山本倫子

 

Ten Lifestyle Group President Toby Gauvain 氏

今、富裕層ビジネスにはなくてはならない、世界最大の富裕層コンシェルジュサービス会社の考える富裕層向けサービスの世界戦略と今後の展開

1998年に英国で生まれた世界最初の富裕層向けコンシェルジュサービス「Ten Lifestyle Group」。2017年にはロンドンで上場。全世界拠点、200万人以上の富裕層へサービスを提供。英国王室御用達のプライベートバンクCoutts(クーツ)を始め、世界85社以上の金融機関と契約。東京にも拠点があるも、今回英国本社プレジデントにお話を伺った。(南青山グランムーブジャパンにて)

 

より豊かなライフスタイルを実現する富裕層向けサービスを世界で展開

20年前から我社は富裕層に向け てビジネスを展開してきました。日本は年前から。銀行、証券会社、カード会社に対してコンシェルジュサービスを提供しています。多くの富裕層は豊かなライフスタイルを手に入れるためにコストをかけています。しかし、それを得るには、手間暇がかかるものです。それを代わりに行うことが我々のコンシェルジュサービス(以下:サービス)なのです。そして我々は旅行やアート、スポーツ、美食などに通じた、様々な専門家をそのためにご用意しています。お客様からの要望に対して、お客様の望むベストな場所、価格、サービスを提案することが可能になっています。

ではなぜ今各企業がこのサービスを使うようになったかは、やはり富裕層のお客様を囲い込む事にある でしょう。お客様の生活を更に豊かにする為に、満足のいくサービスを提供し、それが各企業のプレゼンスを高めるのです。また、各企業が提供する独自商品をこのサービスに入れ込み、他社との差別化を図り、蓄積されたお客様データに基づき、マーケティングを行うのです。

我々がこのジャンルで競争優位性があるのは、まずは富裕層サービスを最初に始めた会社であり、世界中22の拠点がすべてグループ会社なのです。フランチャイズではなく、それぞれの拠点が共通のプラットフォームを使うことにより、自国外のお客様からのリクエストに対しても、非常に高いクオリティのサービスを提供できます。例えば日本のお客様へのサービスは、日本、英国、米国、奥州に駐在する日本人が担当するため、24時間、365日、日本語での対応が可能。NYやロンドンでのシアターチケット手配も日本語でのシームレスな細やかな対応が可能になるのです。

我々のビジネスの基本は「ホワイトレーベルサービス」と定義し、大手銀行、プライベートバンク、カード会社(HSBC 、Amex、RBS、BOC 、ICBC、OCBC等)のサービスとして、自分たちは黒子になり、企業の顧客サービスの一環として我々のサービスを提供するオペレーションです。これによって企業と顧客との関係性を深め、築きます。電話やメールの対応で「〇〇銀行、プレミアムコンシェルジュサービスデスクです」、と企業が提供する商品としてお答えします。このサービスは創立当初から推進しており、今ではハイクオリ ティな顧客サービスが要求されている多くの企業で運用されています。

 

「パーソナライゼーション 」でより細やかな対応と提案が可能

富裕層向けのコンシェルジュサービスにおいて、近年大きく変化しているのは「パーソナライゼーション」です。聞かれたことだけ答えるのではなく、その顧客が過去の履歴を参照し、趣味・趣向を把握 する。今現在、どこにいるかなどを含め、常に先回りしてニーズ把握と提案をすることが重要なのです。それを我々は携帯端末で利用できるデジタルプラットフォームを作ることで対応しています。お客様が好きな時に、デジタルでも、電話でもリクエストが可能です。

以前にロシアのファミリーのご要望で、バッキンガム宮殿でお茶をしたいという要望にお応えしたことがあります。また日本では、場所やプレゼントのご用意をし、プロポーズの企画をしたこともございます。今後、富裕層のご要望は多様化し、複雑化していくと思います。それに対して我々はAIやITの開発を含め様々な方法で対応しています。また、日本人のサービスに対する考え方は他国より厳格で、小さなミスも許されません。そのような実情も考慮しつつ日本の市場でサービスを更に展開していきたいと思います。

 

Toby gauvain トビー · ゴベイン

Ten Lifestyle Group Presidentバッキンガムのストウスクール、ウェスト・オブ・イングランド大学を出て、ニューヨーク BNY Mellon、マドリッド、ジュネーブのSantanderと長い間金融サービスに携わる。3人の子供と奥様の5人家族。休日は家族とできるだけ多くの時間を過ごすようにしているという。それ以外には、旅行、ランニング、テニス、セイリング、競馬、映画、自らスパニッシュギターを弾き、料理も作るのがとても好きという多趣味のライフスタイルを持っている。

 

コンシェルジュサービスへのご質問・ご要望は以下記載の連絡先まで

テングループジャパン株式会社

〒151-0073 東京都渋谷区笹塚1-48-3 住友笹塚太陽ビル7階

日本事業開発代表 牧野大祐

 

株式会社LIFULL 代表取締役社長 井上 高志 氏

「あらゆるLIFEを、FULLに。」を掲げ日本最大級の不動産情報企業が目指す次のステージ

家を借りようと思ったり、売り買いをしたりする前に、パソコンやスマートフォンなどで検索をすることは今や当たり前の行動になった。しかし以前までは、不動産価格の相場や価格の推移は業者の 差配によって左右されることが多く、長きにわたって不明瞭な状態が続いてきた。その不動産情報に イノベーションによって大きな改革を果たしたライフル。ICTによってさらに人の生活に革進をもたらそうとしている。

半蔵門にある築50年超のオフィスビルをリノベーションしたライフルの新オフィス。新しい働き方を示す、スタイリッシュで洗練されたスペースでお話しを伺った。

 

人の価値観の変化は多様化し自分らしさを追求するように

昭和平成の流れの中で考えると、昭和の高度成長期には物質的な満足を得ようとする時代でした。例えば、不動産の場合、まず賃貸で新居を構えて、マンションに住み、最後は一戸建を手に入れること、皆がそれを目標とする時代でした。ところが平成になってからデフレの時代になり、そういう目標を是とする雰囲気が無くなってきたと思います。今後は多様性の時代になり、一人一人が自分らしく生きるためにどうしたらいいのかを考える時代に進んで行く気がします。そこで当社もその多様性の中でユーザーに応えていけるサービスを提供したいと思っています。

慶応大学の前野教授の考える『幸福論』による『地位財』『非地位財』という考え方があります。地位財は住居のスペックや、高級車などの人との比較によって満足を得るもの、非地位財は人との比較によらず、満足を得る自分らしい住まい方や、ライフスタイル、健康、愛情など。幸福との相関関係で言うと非地位財の方が幸福度は高くなります。すでに社会がその後者の価値観にシフトしているような気がします。

社是である利他主義を中心に、『あらゆるLIFEを、FULLに。』をコーポレートメッセージに掲げ、全方向でリノベーションと革進を生み出すことで世界中のあらゆる人々を幸せにすることを考えています。そのために様々な不便や不安、不満などを取り除くことを行っています。それが我社のビジネスアプローチの主軸になります。私自身の人生のビジョンとターゲットの中心は『幸福と平和』なのですが、最近では財団を作り、世界中の『Wellbeing』の研究者に支援・援助を行っています。『Wellbeing産業』を成長させるため、その指標を作ろうとしています。

 

「理想的な住まい」を示す「スーパーシティ」の実現が人の住まい方を変える

後はビジネススタイルの多様 化も伴って、定住型の住まいに加えて、二拠点や他拠点、無拠点などの居住スタイルが発生します。AIやロボットの進出によって人はあまり働かなくても良くなる時代になるでしょう。すると収入自体も減ってしまいますが、限界費用(生活コスト)を下げることによって可処分所得は増やすことが可能になります。そんな時代に幸福を享受出来る『スーパーシティ』のモデルを作ろうと構想しています。そこにはAIやIoT、ブロックチェーンや自動走行などの技術を導入し、遠隔地でも医療や教育も含めてクオリ ティの高い生活を実現できることを示したいと思っています。これらが実現すれば、我社の事業の一つである『LivingAnywhere』なライフスタイルの実現をさらに推進できます。自動走行型のモバイルハウスを例に挙げると、エネルギーや水を自己生成したり、オフグリッドで自己完結したりする住まいができれば、今後人口減少などに伴うインフラ崩壊に対するひとつの解答になるかもしれません。

自分にとって居心地の良い住まいとは、自分自身がどうありたいの かを考える必要があります。理想や目的があって、その先が決まるのであり、ハードやソフトはその次のこと、未来の住まいはこれまでの画一的な住まいとは全く違ったものになることでしょう。

 

不動産情報のイノベーションによって業界を改革してきたライフル。社員を含めた全方向での利他主義を貫いて、一丸となって「あらゆるLIFEを、FULLに。」するという大きな目標に向かって着実に進んでいるようだ。

 

Profile

井上 高志 Takashi Inoue 株式会社LIFULL 代表取締役社

長根っからのアウトドア派である井上氏は休みが出来ると、北海道、南富良野の山中に所有する山小屋で、朝起きて、魚釣りをして、捌いて食事を作り、風呂に入るために薪をくべるなどをして一日を過ごす、という原始的な生活を家族と過ごしているという。電気・ガス・水道のない生活をすることで右脳に栄養を与え、違う感覚を研ぎ澄ますことによって色々な気づきが得られるという。まさに「LivingAnywhere」を実践しているのだ。

株式会社LIFULL総掲載物件数 No.1 ※産経広告社調べ(2019.1.7)の不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S(ライフルホームズ)」のほか、地方創生や介護、ママの就労支援などにも事業拡大。06年東証マザーズに上場、10年東証一部に市場変更。11年から海外進出をスタートし、14年にはスペインのTrovit 社を19年1月にはMitula社を子会社化した。17年4月、会社名をネクストからLIFULLに変更。

 

G&S Global Advisors 代表取締役社長 橘・フクシマ・咲 江 氏

人財コンサルタントが知る 世界で通用する人財の能力とは

日本のヘッドハンターとして世界市場を舞台に活躍をされてきた橘・フクシマ・咲江氏。数多くの経営者たちを身近に見て、その誕生に関わった彼女が見る一流の経営者の資質とは。そして現在、あらゆる業界がグローバル化するマーケットのトレンドの中で、たとえ国が変わっても、生き残り、成功するビジネスマンに必要な資質などについて伺った。

(文中、「人財」とは 彼女の人を企業の財産とする考え方に より使用)

 

外資企業に対する偏見が転職の障壁になった90年代

世界最大手の人財コンサルティング会社の日本支社長を務め、2008年にはビジネス・ウィーク誌「世界で最も影響力のある「ヘッドハンター・トップ100人」に唯一の日本人として名を連ねたフクシマ氏。その煌びやかな経歴の中で出会った経営者達から得た「グローバル経営と人財」への様々な知見についてお伺いした。

 

91年から人材の業界に入ったのですが、まだその当時は非常に小規模な市場でした。入社したコーン・フェリーは世界的に展開していましたが、日本支社ではクライアント企業はグローバル人財を求める外資系で、日本人の適任の候補者が見つからず、苦労しました。グローバルな方が少なく、その上当時は外資系のイメージは『きつい』『競争』『解雇』の3Kと敬遠され、人財市場の流動性も低かった時代でした。90年代後半からは金融市場が活発になり、日本企業のMBAの取得者が欧米の金融機関に転職するケースが増え始めました。コーン・フェリーで仕事を始める前に、ソニーの盛田さんにインタビューする機会があり『ソニーは来る人拒まず、去る人追わず(ソニーにいたことを評価してくれたから)、一番良いのは出た人がまた戻ってくることなので、これから人財業界は伸びますよ』とおっしゃっていたのが印象的でした。

当時の欧米系企業では、まずは日本支社長、次にアジアのトップ、いず れは本社のCEOの元で働けるようなグローバル人財を求めていました。ところが、その要件を満たす候補者の方が少なく、また、当時の担当クライアント企業はリシュモンドや、ルイ・ヴィトン・グループ、シャネルなど のハイブランドでしたが、『外資では成功しなければすぐに解雇される』と思われ、躊躇される方も少なくありませんでした。人財ニーズも時代によって変遷しています。ラグジュアリーブランドの展開がデパート中心だった頃には「デパートの社長と接交渉出来る人」、路面店での展開を始めると、「流通戦略も考えられる人財」、商品部長も、感性の世界から、在庫等の数字管理が出来る人財が求められるようになりました。人財市場も需要と供給のミスマッチがあり、また適任の方は説得する必要もありました。優秀な方でも、最初は戸惑われるので、フォローも必要でした。例えば、本社への報告も日本式と外資では大きく異なります。ある外資系企業にご 紹介した方が、最初の会合で『入ったばかりで何もわかりませんのでまずは皆さんのご意見を』と発言されたのですが、企業からすれば「経験者を採用したはずなのに意見がないのか」ということになるんです。英語が堪能な方でも、コミュニケーションのロジックの違いを理解する必要があります。当時は次第に日本企業の海外からの帰任者で、外資へ移る方も増えましたがまだまだ少数派でしたね。

 

学ぶ力、多様性対応能力、そして危機管理能力が求められている

グローバル人財として求められる能力は、専門的資質(経験、職務能力)や個人的資質(基礎的能力や性格)などがありますが、基本的に求められる資質は、当時から大きく変わっていません。ただ現代ではアジリティ(柔軟に学ぶ能力)、そして多様性対応(活用)能力(危機管理能力、コミュニケーション能力、創造的問解決能力等)が要求されます。この激変する技術革新の時代の先を行くこと、人種・文化の違いを超えて人を動かす能力があるか、特に最悪のシナリオに対応する、危機管理能力があるかが必要になってきていますね。

 

国際的な競争力を持った「人財」を育てる教育方法や、多様性を持った人財の登用方法など、今日本の企業が求められるであろう知見を幅広くお持ちであるフクシマ氏、 世界の「人財」市場において今後の活躍にも大きな期待が寄せられるに違いない。

Profile

橘・フクシマ・咲江 Sakie T. Fukushima G&S Global Advisors 代表取締役社長
78年ハーバード大学教育学修士、87年スタンフォード大学経営修士取得。ハーバード大学日本語講師、コンサルティング会社を経て、91年に世界最大手の人財コンサルティング会社であるコーン・フェリー・インターナショナルに入社。日本支社長、会長就任の後、2010年から現職に。米国本社取締役を12年間兼務。02年より花王、ソニー、味の素等、日本企業11社の社外取締役を歴任。日本取締役協会幹事、03年より経済同友会幹事。11年から15年まで副代表幹事。内閣府、文部科学省、経済産業省で部会委員等を歴任。2008年米国ビジネス・ウィーク誌「世界で最も影響力のあるヘッドハンター・トップ100人」に唯一の日本人として選ばれる。著書、講演多数。趣味は読書と現代アートの美術鑑賞。オークションに参加することもあり、年に一度は海外の美術館にも足を運ぶそう。