WOMEN OF VISION
未来を描く女性リーダー

Photo:鈴木規仁、古末拓也
Edit&Text:三澤和也

女性の社会進出、社会貢献が目覚ましい。
一方で、独特な文化・背景を持つ日本においては、まだまだ課題も残る。
そこで、ここでは証券会社トップ、現代美術家、
育成のプロフェッショナルと三者三様な現役リーダーに
それぞれの立場で過去・現在・未来を語ってもらった。
すべての人に役立つヒントが満載なので、ぜひご一読いただきたい。

自己投資も続ける証券会社トップの挑戦

Profile
IG証券株式会社 代表取締役社長
チョウ キョ
早稲田大学大学院卒業後、日立製作所に入社。2012年にWEB関連会社を立ち上げ、ビジネス向けチャットツールの開発を行う。2017年、グローバルライブ配信アプリBIGO LIVEの日本法人代表に就任。外資系証券会社CMOなどを経て、2026年4月から現職。

―― IGグループの日本法人トップとしてリーダーシップを発揮される中で、信条としているものは何ですか?

チョウ “変化を味方に”です。ご存じの通り、金融商品はAIの開発や世界中で起こる紛争などの社会情勢に大きく影響を受けます。同時に日本は長くデフレが続きましたが、ここ数年でインフレに振れ、金融商品に対する考え方も大きく変わってきています。IGグループは1974年にロンドンで創業して50年以上の歴史を持ちますが、顧客ニーズを的確に捉え、常にスタイルを変化させていかなくてはならないと感じています。

―― 富裕層やエグゼクティブ層がクライアントとなる市場において、彼らが求める価値を提供し、また信頼を得るために欠かせないものとは?

チョウ 多様な提案ができることをモットーとしています。当社はCFD(現物の受け渡しをせず、売買時の価格差のみで決済を行う差金決済取引)で、株式やFXから、原油や金といったコモディティー(国や地域をまたいで取り引きされる国際商品)、コーヒー豆や小麦などのソフトコモディティー(農産物系商品)まで、マイナーな銘柄も含めて選択肢を用意しています。加えて私自身、投資を長く行なっており、いちユーザーだからこその気づきや不安要素は、日々改善するようにしています。

―― プレッシャーの大きな環境に身を置く中で、自身をリセットし、リフレッシュするために大切にしているプライベートの過ごし方についてお聞かせください。

チョウ 筋トレが好きで、週5〜6回がルーティーンです。フィジーク(健康的で美しい体を競うフィットネス競技)では、日本2位になったこともあるんですよ。公私で異なる目標を持つことは大事だと思いますし、体調不良で仕事に穴を開けるのが嫌なので続けています。仕事では脳を、プライベートで体を目一杯使うことで、片方がもう片方の活力になっていると感じています。

―― 金融の枠組みやビジネスのあり方が急速に変化する現在、IG証券が描く未来のビジョンとは?また、個人的に挑戦していきたい新たな領域についても教えてください。

チョウ 日本の若年層の投資経験者は1割ほど。一方で、欧米は8割に近付いています。つまり大いなる伸び代がある状態で、IG証券は安心安全はもとより、各種サービスの充実を図っていきます。同時に当社は教育にも力を入れており、高校生向けにセミナーなども企画しています。“投資家は孤独である”とも言われており、投資家同士がつながれるイベントも増やしていきたいですね。投資は簡単ではないですし、生涯勉強していかなくてはならないものだと思います。しかし“投資は世の中を知ること”であり、世の中を知れば人生はもっと豊かになります。投資の裾野を広げることが、我々の役割です。

―― 最後に、さまざまな立場の女性リーダー、またその候補にメッセージをお願いします。

チョウ 見るまえに跳べ!ロールモデルを探して真似することも一つの方法ですが、直感を信じて飛び込む、いくつになっても自分のやりたいことを悔いなくやることの方がよほど重要です。あなたが、のちのロールモデルになるのかもしれないですし。自分に投資して、しっかりとリターンを得てください。


本国英国で2026年9月にローンチしたばかりの新アプリ。「日本でも1〜2年後をめどに導入できれば」とチョウ代表取締役社長。


フィジークの大会では日本2位になったことも。



食事にも気を遣う。「スタッフからは、『またチョウさん、葉っぱ食べてるんですか?』と言われちゃうんですが……(笑)」。

“ 世界の採取”を重ねて描くアーティストの美学


夫・名和晃平との共作となる全幅約9mの「PixCell-Our New World」の前で。
風景写真や生成AI画像の断片を用いて清川が構成した画面を、名和が透明のセルで覆うことで、イメージが分割と統合を繰り返しながらおぼろげに揺らめく。

Profile

現代美術家/アートディレクター
清川あさみ

兵庫県生まれ。写真や雑誌、布などに刺しゅうを施す独自の表現方法で知られる。2026年9月、夫である彫刻家・名和晃平と初めての2人展を開催。さらに新刊『みえないにわ Invisible Garden』を上梓。小学4年生と2年生、2男児の母でもある。

―― 写真に刺しゅうを施すなど、清川さんならではの表現方法には、どんな意図があるのでしょうか?

清川 対象となるヒト・コト・モノの本質を見抜いて、一面的には語れない何かを表出させるために異なる要素をミックスし、“見えないものを可視化する”ようにしています。私のアクションによって、今とは違う世界に行けるような作品を作れればと考えています。

――25年のキャリアを重ねた今、清川さんが考える“クリエイティブであるため”に必要なものとは?

清川 やはりインプットですね。私は好奇心のかたまりであることを自負していて、旅に出たりすることで行う“世界の採取”をライフワークにしています。そこで見聞きしたことは私の宝物です。そんなふうにインプットを続ける中で、点と点がつながることがあるんです。本当に興奮しますし、創作の種ができる瞬間だと思っています。AIが当たり前の時代になって、情報収集はこれまで以上に簡単です。だからこそ、知ったつもりは非常に危険だと感じており、時にあえて逆走したり、第6感を信じたりしています。

―― アーティスト本人が大規模なプロジェクトや空間演出、ブランディングなど、ビジネスの領域をもけん引するケースがある中で、個人のこだわりとチームビルディングをどのように調和させていますか?

清川 まずは、チームとしてのゴールを確認します。世界一位になりたいのか、売り上げを取りたいのか。次は、自分の立場の確認です。私が指揮者になることもありますし、指揮者に従うこともあります。最初にこれらの共通理解さえきちんとできれば、あとは皆プロフェッショナルなので、1+1が3以上になると信じています。

―― 表現者として、母として、1人の女性として日々を駆け抜ける中で、ただし1日は24時間しかありません。時間のやりくりについて教えてください。

清川 私は1年間でやるべきことを決めています。また、1日の時間の使い方を細かく管理しています。移動などの“1人時間”にはコンテや原稿が捗りますし、家事や育児も一つのプロジェクトとして捉えることで、創作活動同様に楽しんで実行しています。

―― 本特集のテーマである「未来を描く女性リーダー」に即して、それぞれの立場で自らの道を切り拓き、独自の美学を持って生きようとする女性たちに向けてメッセージをお願いします。

清川 “自分を知る”。これをぶらさずに、情報に惑わされず、自分の良いと思う、きれいだと思う世界を信じてください。誰かと比べても良いことはないし、自分を強く持つこと。そうすると、見えないものが見えてくると思います。そして、それこそがあなたのアイデンティティーになるはずです。


「旅は私にとって欠かせない要素」と清川さん。こちらは2025年の夏に家族で行ったスペイン。ダリ劇場美術館にて。

リーダー育成のプロが説く
美しくしなやかな変革力

Profile

ウーマンズ リーダーシップ
インスティテュート株式会社
CEO
川嶋治子

米国留学後、2002年に清水市長(現・静岡市)秘書としてキャリアをスタート。その後、DE&Iの原点となる多文化共生施策を推進。欧州の女性役員育成機関の日本代表を経て、2015年にIWLを設立。DE&Iを経営戦略として上場企業を支援。社外取締役も歴任。

―― まずはウーマンズ リーダーシップ インスティテュート株式会社(以下、IWL)について教えてください。

川嶋 企業のDE&I(ダイバーシティー、エクイティー&インクルージョン=多様性、公平性、包摂性)推進や、女性リーダー育成を専門とする伴走型コンサルティング会社です。我々の対象には企業と個人があります。まず企業向けでは経営者や人事、ダイバーシティーの担当役員がパートナーとなります。DE&Iの本質は企業の変革です。そして、それをリードできるのは経営陣しかいない。だからこそ当社は、クライアントに見えていない課題や未来まで見通した上で、変革を提案します。時に耳の痛い話もありますが、経営者が自社の課題を直視できたとき、変革は動き出します。対女性向けには、優秀だがまだ眠っているポテンシャルを活性化します。あなたにはその力があり、社会に還元できると伝え、リーダーとしての一歩目を後押しします。組織と個人、双方にリーチするのが当社の強みです。

―― 女性リーダーと向き合う上で、欠かせないものとは?

川嶋 オーセンティシティーとインテグリティー(本物であることと誠実さ)ですね。女性リーダーの変革は、自分と向き合うことから始まります。その葛藤まで話していただくには、私たちも嘘偽りのない本物であり、かつ誠実であること。それが信頼のベースとなります。私自身も分岐点では自分と向き合い、“良い世の中をつくるために、より影響が大きい方”を選んできました。

―― 起業から10年以上、風向きは変わった?

川嶋 10年前は“女性リーダー”という言葉も概念もない時代。そこから大きく前進した一方、先進国の中で日本はまだ遅れています。私の代で、この社会変革を完了させたいです。

―― このうねりを、より加速させるために必要なものは何だと考えますか?

川嶋 各業界で先進事例をつくり、社会の当たり前を更新することです。業界一位の企業がDE&Iで変革に成功すれば、追随する企業が必ず出てきます。また、変革を担うリーダー層は、すでにそのポジションにいることに意味があります。変革できる人材であるから、長い歴史の中で転換点たる今、バトンを持っているのです。ですからIWLとしては彼らを勇気づけ、影響力を発揮できるように支援しています。変えることは内側からしかできませんので。

―― 川嶋CEOが自分をリセットし、心身を満たすために大切にしているプライベートの過ごし方について教えてください。

川嶋 コロナ禍に茶道を始めたのですが、一期一会の考え(この茶会は一生に一度のものであり、互いに誠意を尽くす)に感銘を受けました。同じ瞬間って二度とないですし、日常の中にあるささやかな美に気付くことで、人生が豊かになると感じています。

―― 最後に「WOMEN OF VISION」という本特集のテーマに即して、未来の女性リーダーたちへメッセージをお願いします。

川嶋 あなたの心に宿ったビジョンはとても尊く、それは必ず実現可能です。他の誰にも描けないものであり、無理と思わず踏み出してください。一緒に守り育んでいきましょう。


ドイツの国際認証機関テュフ ズードの日本法人設立30周年を記念したパネルディスカッションに登壇。「女性がより活躍できる社会をつくるためには?などについてトークしました」。



「好奇心旺盛なので趣味も多くて」と川嶋CEO。ハワイ・オアフ島でのサーフィン(上)と茶道(下)。「どちらも“センターポジションに戻ってくるため”の、私の大事な充足時間です」。