世界を見据える韓国

世界中で様々な情勢不安が噴き出している昨今だが、
早くから世界を相手にグローバルな展開をする韓国。
そこには、いまいちど我々が考え直すべき
グローバルな視点や考え方があるのかもしれない。
世界を見据える韓国の「今」を代表する芸術、
エンターテインメント業界、ホテルや食の最前線で
活躍する方々にその答えを探りたい。
写真・文/大橋マサヒロ

古き良き伝統とモダンテイストが同居する街並み。観光しても良し、ビジネスを視野に入れても良し、どこまでも魅力でいっぱい。

画家・李木乙氏 × 美容家・ユ ヒャンさん

極写実主義の絵画で有名な李木乙氏。リンゴやナツメなどの描写で名声を得た。氏の描いた絵には、共存に対するメッセージがある。その奥義に美容家のユ ヒャンさんが迫る。

大きな分岐点となった笑顔のマークとの出会い

 転機は図らずも画家として致命傷の目の異常だった。独学で絵の研鑽を積み、山にこもって何を描くべきかをひたすら苦悩する時を過ごしていた時、目の前の木の板が自分にささやくような感覚を覚えたという。それからは目の前の木が何を描いて欲しいのかを聞き、会話しながら描くようになった李画伯。当時の作品は木の板に魚や木の実などを写実的に描いている。木片に魂を宿す生き生きとした作品によって、先生の名声は国内外で広く知れ渡ることとなった。しかし運命のいたずらか10年ほど前に目の病気を患いこれまでのように絵を描くことが叶わなくなる。そこで今度は自身に問いかける日々を過ごす。そんな時、何気なく目にした笑顔のマーク(ニコちゃんマーク)に答えを見つけた。自分は絵を描くことが最終目的ではない、絵は手段だと。自分の描く絵によって他人を笑顔で幸せにすることが目的だと悟った。これまで得意としてきた写実的な絵は目の病の影響で描くことができない。以来、キャンバスいっぱいに描く笑顔のマークに全身全霊を注ぎ込む。今日では、どことなくご自身の分身に見える元気一杯の笑顔のマークが代表作となっている。
 ソウル市内から車で30分のヤンピョン地区は、周囲が緑に囲まれている、ソウル市民憧れの避暑地。ここに画伯のアトリエ兼ギャラリーがあるというので伺った。周囲とは明らかに様子の異なる独特の形をした真っ白い建物がギャラリーだ。ギャラリー内はカフェスペースにもなっていて作品が展示されている。一つ一つの作品を丁寧に説明していただいた。印象的だったのが「私にとって絵を描くことは目的ではなく手段だと目が不自由になって気づいた。絵を通じてたくさんの人に笑顔を伝えることが私の天命なのだ。最近やっと画家になれたと思う。それまでの人生は絵を学ばせてもらっていただけだ。」という言葉。
  画伯がサラサラと筆を走らせるだけでこちらまでつい笑顔になってしまう。李画伯は画家という枠にとどまらず、人々に幸せを分け与える笑顔の伝道師として、これからも歩み続けていくことだろう。

  • 命運を分けた「笑顔のニコちゃんマーク」を背に。李木乙氏は「微笑み」に突破口を見出した。

  • アトリエ兼ギャラリーの前でのひとコマ。訪問者には分け隔てなく接するのがモットー。

  • 李木乙氏の描く絵には「微笑を取り戻すことこそが人生を支える」のメッセージが込められている。

Profile

韓国 嶺南大学 学士( 美術)
李木乙 Lee Mokul
韓国永川出身。シカゴ、上海、サンフランシスコ、シンガポール、イスタンブールなど、世界各国で現在まで43 回の個展を開くなど精力的に活動を展開。韓国の小学校・中学校の教科書にもその作品が掲載されている。現在の活動はホームページでも紹介。

tel: 010-4142-4624
e-mail:lmokul@hotmail.com
http://www.mokul.net

Profile

ユ ヒャン Yoo Hyang
韓方美容家、日韓美容親善協会代表理事・江南区広報大使(ソウル特別市)。日本と韓国の架け橋として両国にて韓国の美容・文化・芸術を発信。医療観光事業や化粧品のプロデュースやファッション事業も手掛けている。

JYP エンターテインメント・ジャパン 代表取締役社長
宋知恩(ソン ジウン)さん

透き通るような白い肌と優しげな眼差しが印象的な女性が、韓国エンターテインメント業界を代表する才色兼備の宋知恩社長。JYPエンターテインメント・ジャパン(以下、JYP)日本社長に抜擢されて日本に就任した当初は、ほとんど日本語を話せなかったというが、今回のインタビュー中、通訳を介さず言葉を慎重に選びながら丁寧な日本語で受け答えしていただいた真摯な姿勢に、ソン社長の人柄のよさを垣間見た。

「愛」をキーワードにして世界中を幸せに…

 当初、提携するソニー・ミュージックエンターテインメントとのミーティングでは英語でやりとりしていたが、細かなニュアンスは英語では伝わらないので、仕事の合間に独学で必死に日本語を学んだ努力家。JYPエンターテインメントはメインプロデューサーJ.Y.Park をはじめ、「2PM」「GOT7」「TWICE」が所属する芸能エンターテインメント会社である。所属するアーティストは、早くからYouTubeやSNSで支持され、デビュー後あっという間にスピードブレイクし、日本のNHK紅白歌合戦や東京ガールズコレクションなどに出演し幅広く活躍している。「2PM」や「TWICE」などがそうだ。才能と個性溢れる若者たちを発掘し、世界的なアーティストへと育てあげたJYPエンターテインメント。日本でも成功を収めた秘訣について、ソン社長に伺ってみた。
 まず、「最も大切なのはマーケットのリサーチ」だと言う。アーティストの持つポテンシャルを最大限発揮させるためにはSNSやソーシャルメディア、検索エンジンを解析して売り出す市場に合わせたプロモーションを考え、実行する。とにかくスピード感が大事なのだと付け加えられた。そして「愛してくださるひとのため」。今回のインタビューの中でもソン社長の口から何度も「愛」という言葉が出てきた。JYPの求めるアーティスト像は、人に良い影響を与える存在。どんなに才能と魅力があっても性格や態度に問題があれば契約しない。JYPは才能だけではなく、人を育てることに重きを置くという。それは決してアーテイストに限ったことではなく、この会社で働く全ての従業員に対しても同じように大切にするという。それは、「体と精神が健康でなければ良い仕事はできない」という発想からきている。ソウルの江東地区に新たに建てられた社屋は、人にも環境にも害のない建材のみが使われ、屋内は酸素濃度を上げるための空調がされている。従業員用のレストランではオーガニックで体に優しい料理が提供され、会社が年間数億円の負担をしているという。日本の音楽市場をどのように捉えているのか。
 「日本マーケットは音楽市場としてはアメリカと並ぶ2大市場でコンサートツアーの文化が成熟している。アイドル、ロック、ダンス、クラシックなど様々なジャンルが成立する。今後は韓国、中国、日本と国で分け隔てるのではなく国境を越えてプロデュースしたい。韓国のエンターテインメント業界の強みは、例えば韓国のアーティストが楽曲を発表すればiTunesやビルボードであっという間にランキングする。JYPが持つ世界の音楽マーケットへの発信力と日本人の優れた才能をミックスさせたい。そこにK-POPとかJ-POPの肩書きは必要でしょうか? JYPから羽ばたいたアーティストが韓国や日本、世界中で愛されたら私は幸せです。」
 そこには、音楽は国籍や言葉の壁を超えられるというソン社長のグローバルな発想とあふれる愛がこもっている。
 「人生で最も大切なのは愛。全ては家族のために。」ソン社長にとって、所属するアーティストやファン、スタッフ全てが家族なのだ。どんなに忙しくても全ての人に分け隔てなく愛情を注ぐソン社長の行動力やグローバルな発想から、韓国有力企業の多くが世界的なシェアを持つトップブランドへと成長できたことの答えを見つけた気がする。

  • ※ソウル市内にあるJYPエンターテインメントの本社ビル
    オーガニック社員食堂をはじめレッスンスタジオ、レコーディングスタジオなど、アーティスト育成のための設備が整っている。

Information

株式会社JYP エンターテインメント
https://www.jype.com/
韓国を代表する総合エンターテインメント会社で、JYP エンターテインメント・ジャパンは東京都南青山に所在。主な業務は楽曲や映像の企画制作・管理及びプロモーション・販売ほか、芸能マネージメント業務など。また、各種イベントの運営を行う。

五感を満足させてくれる最高のパラダイス
ウォーカーヒルホテル
with 田崎真也さん

2017年6月まで世界ソムリエ協会の会長を務め、世界中を慌ただしく飛び回っていた田崎真也さん。その任期を終えてからは国内外での講演活動に活躍の場をシフトしてはいるが、毎日のように各地を移動し続ける日々に変わりはないようだ。そんな田崎氏にウォーカーヒルホテルの印象を聞いてみると「ここは1~ 2 泊ではもったいない。長期滞在したくなるホテルだね」とおっしゃられた。ワインを通して世界の社交界を見てきた田崎氏に長期滞在したい、と言わしめたウォーカーヒルホテルはどのようなポテンシャルを持っているホテルなのだろうか。

やさしい環境と洗練された空間の都会派リゾート

 ソウルを南北に隔てる川、漢江(ハンガン)を望む高台にあり、広壮洞(クァンジャンドン)に位置したウォーカーヒルホテル。ソウル市の中心地から近いにも関わらず、周囲を豊かな緑に囲まれた好立地のため、ソウルセレブのオアシス的存在として人気が高く、外国人にとってはカジノと美食を楽しめる大人の都会派リゾートとして永く愛されてきた。
 緩やかな坂道を車で進み、車寄せに着くと正装したドアマンに迎えられる。館内へ進むと、そこは外界とは隔絶された格式と品を備えた大人のための異空間。静寂が漂うフロントロビーでひときわ存在感があるのは、地中深く根ざした大樹の根を思わせるような幾本もの重厚な円柱。その円柱を取り囲むようにラウンジがあり、静かに落ち着いて過ごすことができる。天井には、現代アメリカを代表するチフリーの代表作である巨大なガラスのランプシェードが優しく光を攪拌し、居心地の良い空間を醸し出している。グランド・ウォーカーヒルとビスタ・ウォーカーヒルの客室は計19タイプ、676室。メイン棟はゆったりとしたシティホテルタイプの客室仕様になっている。敷地を少し登ったところにあるダグラス・ハウスという棟は、周囲を木々に囲まれた高原リゾートのような趣きで、深い森の中にいる錯覚を覚える。他には、究極の超高級邸宅タイプのアストン・ハウス。ここは1ゲスト限定のベットルームにバーカウンターやミーティングルーム、パーティールームやプライベートガーデンなどがあり、家族やゲストを招いて優雅にパーティーを開くのも良いかもしれない。
 ウォーカーヒルホテルの食へのこだわりも付け加えなければならない。
 この日、田崎氏が向かったのはビスタ・ウォーカーヒルのデル・ヴィーノ。窓越しには雄大な漢江の流れと対岸の千戸(チョノ)の町並みが広がる。席に案内されてワインリストに目を通していると、一人のソムリエが田崎氏に挨拶をしにやってきた。田崎氏を慕う韓国人ソムリエとの再会でワイン談義に花が咲いた。
 夜の帳にはまだ早い。カジノに向かう前に田崎氏はふらっとバーに立ち寄り、マティーニをオーダー。そのホテルの持つ雰囲気や格、客層を把握するのにはバーに行くのが一番なのだろう。ソウル一のロングカウンターがウリのバーだがあえてそこには座らず、控え目にその場の雰囲気やゲストとバーテンダーとのやり取りを楽しむ田崎氏であった。
 カジュアルな雰囲気のビスタ・ウォーカーヒルのデル・ヴィーノ以外にも、ウォーカーヒルには韓国宮廷料理や炭火焼専門店、和食や中華料理などのダイニング&バーがある。このようにゲストの要望に応じた様々な宿泊施設が備わっているので、家族やカップル、ビジネスパーソンなどいつでも人を選ばずソウル滞在を優雅で快適に過ごすことを約束してくれる。

  • 漢江の美しい風景を一望。都市の利便性と自然の快適さを同時に楽しめる。

  • ウォーカーヒルホテルのこだわりが具現したデル・ヴィーノ。

  • ソムリエと会話をする田崎氏。ワイン談義に花が咲く。

  • デル・ヴィーノでは一流シェフが腕を奮う料理が楽しめる。

  • 敷地内の森の中に佇むアストン・ハウス。優雅な外観がひときわ目につく。

長年に渡り信頼されてきた老舗のカジノ
パラダイスカジノ・ウォーカーヒル
with 田崎真也さん

  • 真剣な表情で勝負に挑む田崎氏。つい先ほどまで笑顔だったディーラーも本気モードに。

韓国の夜をリードする大人のプレイゾーン

 田崎氏に韓国との思い出を聞いてみた。
 「まだ若い頃、フランスへワインや料理の勉強に行った帰りの飛行機がソウル経由でした。せっかくだからソウルの町で韓国料理を食べてみようと見当をつけて入ったお店は焼肉屋。当時は今と違って町中の看板もメニューもハングル文字だけだったので、とりあえずカルビ、と注文してみたら通じたけれどロースは通じなかったね。」と、ほろ苦いエピソードを聞かせてくれた。すでに田崎氏は今宵のカジノのためにドレスアップしていた。と言ってもここは韓国。モナコのようなヨーロッパの上流階級のための社交場とは立ち位置が違い、パラダイスカジノ・ウォーカーヒルは広く門戸を広げ、外国人であれば誰でも安全で安心して楽しめるカジノだ。そのため、ドレスコードもさほど厳しくないが、田崎氏はビシッとフルオーダーのタキシードに身を包み、颯爽とウォーカーヒルホテル地下に広がる大人の社交場、パラダイスカジノ・ウォーカーヒルへと乗り込んで行く。田崎氏と接する度に感じるのは本物の大人の色気と立ち振る舞いだ。他人と対峙する際、さりげなく相手を思いやる気遣いや、何気ない会話に優しさと懐の深さを感じる。決して知識や肩書きを楯に自身を大きく見せるのではなく、まるでカメレオンのように相手の立ち位置を瞬時に計り対応を変える。それが世界を代表するソムリエとしての資質なのだろう。
 隙の無い着こなしでルーレットのテーブルに着くと、ポーカーフェイスだったディーラーの表情がほんの少し引き締まったように見えた。お互いその世界のプロ同士。一流は一流を瞬時で見抜くのかもしれない。田崎氏はカジノをどのように嗜むのだろうかお聞きした。
 「事前に決めた金額で勝負して負ければそれで切り上げるし、勝ったらそれでいい酒を飲む。ダラダラと長時間やらない。」というご自身の流儀がある田崎氏はシャンパングラスを傾けながら大人の色香漂わせ、ディラーとの真剣勝負を始めた。
 パラダイスカジノ・ウォーカーヒルは、外国人専用のカジノでスマートカジュアルな服装であれば誰でも入場してプレイできるので、カジノ初心者からリピーターまで幅広く受け入れてくれる。日本語の話せるディーラーもいるので、せっかくのソウル旅行のハイライトとしてほんの少しドレスアップし、運だめしにソウルの夜を楽しんでみてはいかがだろうか。

  • ルーレットやカードだけでなくスロットマシンもあり、心おきなく楽しい時間が過ごせる。

  • カジノに向かうためにタキシードを身に纏った田崎氏。夜の社交場にぴったりの装いだ。

  • 豪華絢爛なエントランス。これだけでも気分が高揚。

Information

ビスタ・ウォーカーヒル
ソウル特別市広津区ウォーカーヒル路177
TEL +82-2-455-5000
www.walkerhill.com/vistawalkerhillseoul

Information

パラダイスカジノ・ウォーカーヒル
ソウル特別市広津区ウォーカーヒル路177
TEL +82-1899-0700
www.paradisecasino.co.kr