総合選抜型入試で圧倒的な合格実績を誇る
スイス公文学園高等部の全貌に迫る
大学受験の総合選抜型入試において圧倒的な合格実績を誇る高校がある。それが、スイスに位置する**スイス公文学園高等部(KLAS)**だ。1学年わずか45名の小さな学校ながら、スイスの全寮制環境で育まれる生徒たちは、ほとんどが国内の難関大学や海外の名門校に進学する。
なぜ、KLASの生徒は総合選抜型入試でこれほど評価されるのか。その秘密は、学力だけでなく、子供の「人間力」を育む独自の教育にある。
本稿では、KLASの担当者や保護者への取材を通じて、この学校の魅力を深く探る。
アルプスの全寮制で育つ、未来のグローバルリーダー
スイス公文学園は、スイスのレザンに位置し、アルプスの壮大な山々に囲まれた全寮制の学校だ。意外なことに、KLASはインターナショナルスクールではない。入学者のほとんどは、日本の公立中学校を卒業した普通の生徒たちで、帰国子女や外国籍の生徒はごくわずかだ。それでも、校内では英語が公用語として使われ、授業の半分以上が英語で行われる。生徒たちは、日常会話から学術的なディベート、プレゼンテーションまで、英語に浸る環境で3年間を過ごす。
この英語中心の環境は、総合選抜型入試で大きな強みを生み出す。多くの大学が重視する英語力(IELTSやTOEFLのスコア)はもちろん、国際的な視野やコミュニケーション能力が自然に育つ。KLASでは、単なる会話力にとどまらず、学術的な英語力も徹底的に鍛えられる。たとえば、英語でのエッセイ執筆やディベートを通じて、生徒は論理的思考と説得力を磨く。これが、総合選抜型入試の書類審査や面接で高評価を得る要因となっているのだ。
KLASの進学実績が、まさにその教育の質を物語っている。卒業生の約3割が海外の名門校に進学し、国内進学者の8割以上が国公立大学や早慶上智、GMARCH、関関同立といった難関校に合格する。これは偏差値65~70の進学校に匹敵する成果だが、スイス公文学園の場合、特筆すべきは入学時の学力が偏差値50~70と幅広い点だ。普通の公立中学から私立進学校まで、多様な背景の生徒が集まり、互いに刺激を与え合う環境が、KLASのユニークな魅力となる。
-

(1)
-

(2)
(1)生徒が中心になり英語及びフランス語で日本の文化を地域に発信する催し「オープンハウス」を実施。地元レザンの人たちや海外の多くの方と交流が生まれる。(2)ヨーロッパの都市に集まった各国のメンバーとともに、合唱やオーケストラの一員として練習し、その成果をコンサートで披露する「国際音楽祭」。
保護者の声:KLASが子供に与えた影響
スイス公文学園に2人の子供を進学させた、建築関係の会社を経営する鳴嶋氏は、この学校の魅力を熱く語る。最初にスイス公文学園の話を聞いたとき、鳴嶋氏は魅力を感じる一方で不安もあったという。「公立中学で成績がクラスの真ん中くらいだった息子が、英語も話せないのに全寮制のスイスの学校でやっていけるのか心配でした。帰国後の日本の大学進学も気になりました」と振り返る。
そこで、鳴嶋氏はスイス公文学園を紹介してくれた保護者に卒業生の進路について詳しく尋ねたという。「その保護者のお子さんが卒業した年は、45名ほどの卒業生のうち3割が海外の大学に進学し、7割が国内の大学に進んだそうです。国内進学組では、慶應大学に5名、国公立や医学部、早稲田大、関関同立、GMARCHなど、8割以上が上位有名大学に進学していたと聞いて驚きました」と鳴嶋氏は語る。海外大学への進学率の高さもさることながら、日本の有名大学への圧倒的な進学実績に特に感銘を受けたという。
しかし、鳴嶋氏がスイス公文学園の真の価値を感じるのは、進学実績だけではない。「3年間で子供たちが積む多様な経験こそが本当の魅力です。模擬国連、発展途上国へのボランティアトリップ、交換留学、ヨーロッパ諸国への研修旅行、英語ミュージカル、オープンハウス、コンサートなど、国際交流の機会が驚くほど充実しています」と鳴嶋氏は言う。さらに、これらの活動は生徒の自主運営で行われ、全寮制の寮生活や生徒会、体育祭、部活動でのリーダー経験を通じて、生徒全員が複数のリーダーシップを経験できる点も大きい。「小規模な学校だからこそ、子供たちは能力的にも人格的にも大きく成長します」とその教育の底力を称賛する。
スイス公文学園の魅力は、国際的な経験やリーダーシップだけにとどまらない。授業スタイルも欧米型で、ディスカッションやフィールドリサーチ、プレゼンテーション、グループワークなど、参加型の学びが豊富だ。「社会で必要な能力が育まれ、大学卒業後の活躍につながっています」と鳴嶋氏は評価する。
こうした環境が、子供たちの進路に対する意識にも影響を与えている。「スイス公文での経験を通じて、子供たちは自立し、将来の目標を明確に持つようになります。私の息子は映像を学びたいと立命館大学映像学部に進み、大手広告企業に就職しました」と鳴嶋氏は誇らしげに語る。また、上位大学に進まなかった生徒たちも、芸術や薬学、パイロットなど、将来自分が目指したい専門のために主体的に選ぶケースが多いという。「日本の高校ではなかなか見られない、目的意識を持った進路選択です」と鳴嶋氏は強調する。
-

(3)
-

(4)
(3)「模擬国連」では、本物の国際連合さながらに各部会に分かれ、世界の環境・政治・経済・教育問題などについて英語で討議を行う。(4)社会貢献活動やその関連分野での学習が積極的に行われており、世界の困っている方々の助けとなるような社会奉仕活動も行っている。
安心できる環境と、保護者の厚い信頼
小規模な海外の学校では、いじめが起きた場合に孤立してしまうのではないかと心配する声もあるかもしれない。しかし、スイス公文学園では、在外日本人学校や海外に留学する日本人学生によく見られる薬物問題、いじめ、精神的な不安といった事例が、在校生や卒業生からほぼ報告されていない。その主な理由は、日々の学園生活が刺激的で充実しており、違法行為やネット依存に走るような隙を与えないことにあるだろう。
加えて、全寮制ならではの厳格な管理とルールも大きい。取材で感じたのは、温かく家庭的な環境でありながら、いじめや不正に対しては明確な罰則で厳しく対応する姿勢だ。これは、国際社会で活躍するリーダーを育てるエリート教育として、イギリスの伝統的なパブリックスクールのように、強い規律と高い自覚を生徒に根付かせているからだと個人的には思えた。
もう一つ特筆すべきは、保護者からの厚い信頼だ。多くの家庭が兄弟全員をスイス公文学園に通わせていることが、その証拠となっている。この事実からも、いじめなどの問題がほぼ存在しないことがよくわかる。もし子どもが3年間通った学校に問題があれば、兄弟を同じ学校に入れようとはまず考えないはずだからだ。
都内で大手製薬会社に勤める高橋氏には、スイス公文学園に進学した3人の息子がいる。なぜ3人全員がこの高校を選んだのか、その理由を高橋氏の言葉から紐解いていく。
「息子たちは3人とも、都内の大学までの一貫校で小中学校時代を過ごしました。成績は中くらいで、英語も特別得意ではなかったんです」と高橋氏は振り返る。それでも、長男がスイス公文学園に進学し、「日本では味わえない充実した高校生活を送っている姿」に影響され、次男、三男も同じ道を選んだという。「長男が楽しそうに学園生活を話すのを見て、次男も三男も自然と興味を持ったんですよ」と笑顔で語る。
高橋氏がスイス公文学園を知ったきっかけは、小児科医の妻が知人から聞いた話だった。「『スイスの山の上にユニークな高校がある』って本を読んで、すごく惹かれたんです。海外の文化を学びながら、日本人のアイデンティティも大切に育てる教育に感銘を受けました」と当時を振り返る。その話を長男に伝え、本を読ませたところ、「ここに行きたい!」と目を輝かせたという。長男は2018年に同校を卒業後、国際基督教大学(ICU)に進学し、大学院を経て今年の4月から大手コンサル会社に就職予定だ。「中学時代はごくごく普通のレベルだった英語が、卒業時にはIELTS6.5、つまり英検準1級~1級相当まで伸びました。自分で考えて行動する力もついて、別人のように成長したんです」と高橋氏は誇らしげに語る。次男も2020年に卒業し、カナダの名門・ブリティッシュコロンビア大学に進学。「次男のときは、妻と長男が『日本でこのまま進学する場合と、スイス公文に行く場合』のチャートを作って一緒に考えました。長男の成長を見ていたから、次男も迷わず決めましたね」と高橋氏。次男はメディア学を学び、将来はメディア業界を目指している。現在、三男がスイス公文学園の1年生だ。「長男と次男の成功を見ていたから、親子ともども何の迷いもなかったですね」と高橋氏は言う。
高橋氏が特に強調するのは、スイスでの寮生活が子供たちを自立させる点だ。「自分で考えて行動する環境で、子供たちは本当に自立します。次男が海外の大学の受験・入学手続きや現地での生活準備をエージェントも使わず全部自分でやったときは、親として心底感心しました」と語る。
高橋氏の話からは、スイス公文学園が単なる進学校ではなく、子供たちの人間性を育み、グローバルな視野と自立心を養う場所であることが伝わってくる。「ネットには誹謗中傷含めいろいろな話が飛び交いますが、実際に学園や卒業生、保護者の話を聞けば、どんな学校かが分かります。うちの息子たちは、ここで人生が変わったと言っても過言じゃないですね」と締めくくった。
-

(5)
-

(6)
(5)学校やクラブが加盟する交流団体主催の大会に参加し、スポーツを通して地元の方との交流を行う。(6)エーグル町からレザンの町まで走る、21キロにもおよぶ超過酷な「レーグルマラソン」。ゴール地点では地元民の歓声があがり、ゴールインする生徒は毎年励ましあいながらボロボロになりながらゴールする。
日本の国力が衰える中、大学教育は転換期を迎えている。学生に求められる能力も変わり、従来の受験や入試の枠組みとは異なる基準で評価される時代が到来している。これは、不確実なグローバル社会を生き抜くために、詰め込み型の受験勉強ではなく、総合選抜型入試で測られる総合的な力が真に必要だと社会が気づき始めたからだろう。「大学から偏差値が消える」と言われる今、わが子にどんな学校を選び、どんな教育を受けさせ、どんな人間に育てたいか。この記事を参考に、ぜひ考えてみてほしい。