ART:TIMELESS VALUE 永遠の価値を求めて

『Oketa Collection: Love @ First Sight』展(2019年4月17日〜4月27日)の会場

近年、世界的にアート市場に注目が集まり、市場が活況だ。そして、国内でも生活や仕事に潤いをもたらせるため、「資産」としての投資価値を見出す人も多くなってきた。より豊かな人生を過ごすためにアートとどのようにつき合うべきなのか。オークショニアや収集家、新進のアーティストなどともに考えてみたいと思う。

Interview Takamasa Wada / Yoko Tanaka
PHOTO / Daisaku OOZU(展覧会写真 P28-P29/ P34)、Noriko Yamamoto(人物P31 )/ Shinsuke Sugino(P32-P33/ P35)Hisashi Sato(人物P36-P37)

AUCTION

  • 2018年5月クリスティーズ ニューヨークで開催されたペギー & デイヴィッド・ロックフェラー夫妻 コレクション。個人コレクションそして慈善オークションとして史上最高額の落札総額8億3257万3469 ドル (約907. 5億円)を達成した。

  • 2019年11月クリスティーズ 香港で開催されたCan’t Wait ‘til the Night Comes: A Masterpiece by Yoshitomo Naraセール。イブニングセールと同時に開催され、当作品は手数料込みで落札額HKD 92,875,000 を達成している。

Profile

山口 桂

クリスティーズジャパン 代表取締役社長
1992-93 年クリスティーズロンドン及びニューヨークにて研修、1994 年(株)クリスティーズジャパン入社。同社副社長を経て、2000 年よりクリスティーズ・ニューヨーク日本・韓国美術部ヴァイス・プレジデント/シニア・スペシャリストとして勤務。2018 年10月よりジャパン代表就任。数々のオークションを手がけ、2008 年3 月の日本・韓国美術セールでは、伝運慶作大日如来像(現真如苑蔵)を1430 万ドルにて売却、日本古美術品としてのオークション史上世界最高額を記録する。1963 年東京都生まれ。立教大学文学部卒

「現代アートが高騰するアート市場。日本人作家にも注目が集まっています。」

誰もが知る世界二大オークションの一つであり、世界のアート市場を牽引するクリスティーズ。2017年にはレオナルド・ダ・ヴィンチ作「サルバトール・ムンディ」が世界最高額となる約508億円で落札され注目を集めたが、2018年のロックフェラー・コレクションのセールにおいて、個人コレクションとしては史上最高額となる落札総額8億3257万ドル(約907・5 億円)を記録、2018年の総売上は創業以来最高額の70億ドル(7613億円)に達した。活況と言われる世界のアート市場の現状と日本のアート市場について、クリスティーズジャパン代表の山口氏にお話を伺った。

「アートマーケットは大変活況です。特に現代美術に関しては、投機的な部分も含めて大きく動いています。2019年5月には、現存する個人の作品としてはジェフ・クーンズの作品が100億円という記録を作っていますし、香港の現代アート市場も非常に活気があります。状態も良く、来歴が良い作品に関しては現代美術に限らず高値がつく傾向がありますね。良いものがより高値で取引されるのは分野を問いません。日本においても、特に現代アートにおいては新規の顧客が非常に増えてきています。ニュービジネスに関わる方などが関心を高く持っているのを感じます。800万円から5000万円、1億円単位の作品を定期的に買われていますね。特に現代アートにおいてはストリートやアニメなどの影響を受けたムーブメントがあり、KAWSや五木田智央さんなどが出典されれば注目をされると思います。」

「投機的な購入というよりも、生活の中でアートをもっと楽しんで欲しい。」

「私自身、アート作品を投機的に見ることはあまり賛成できないのですが、企業などがコーポレートアートとして残すとき、確かにそこには資産価値が生じますが、アートの持つ影響力を利用して社員の教養やインスピレーションを伸ばしたり、何か革新的な方向を見出したりするようなことはとてもいいことだと思います。今後、アートを購入する方へのアドバイスとしては、まずは信頼性の高い所で購入するということ、投機的な部分は置いておいても、いつかは売るかもしれないということを考えれば、オークションで買い、オークションで売るということは良いと思います。そして、ある程度の金額をしているものはそこに評価が確定していますので、保有資産としては安心できる部分です。もっとも大事なことは〝好きな物を買う〞ということでしょう。近年日本人アーティストの海外での評価は高まっていてオークションでレギュラーで名前が上がるのは村上さん、奈良さん、草間さん、そして杉本さんの4人です。そこに五木田さんなどが入ってきます。特筆すべきなのは奈良さんの価格が高騰しており、10億、20億という数字になっています。前衛美術の〝具体〞の白髪一雄さんなどもこの10年で欧州で再評価を受け、世界に広がっています。欧米では、普通の家にもちょっとした美術品があり生活の一部になっているのを感じますが、日本ではなかなかそうはいきません。実際にオークション会場には500ドルから500ミリオンまでの作品が並んでいるわけで、下見会は誰でも参加可能です。今後はもっと公共性や透明性を高めた上で、生活に根付いたアート購入が出来るような環境を作るお手伝いをしていけたらなと思っています。」

Information

株式会社 クリスティーズジャパン
Tel: 03-6267-1766
Email: EnquiryJP@christies.com
https://www.christies.com/japan/

ART COLLECTOR

Julian Opie(Woman with book and shoulder bag), 2012

アートコレクションが二人のライフスタイル

桶田俊二・聖子夫妻

元々、2000年頃から李朝などの骨董を収集していた夫妻は、2009年にテレビ番組の特集の草間彌生の作品に感銘を受け、コンテンポラリーアートの収集に傾倒し始めたという。コレクションはその草間彌生、村上隆、奈良美智、名和晃平、五木田智央など現代アーティストの作品を数多く集め、海外アーティストも人気のKAWS を始めとして、ゲルハルト・リヒター、ヴォルフガング・ティルマンスなどの作品を所蔵している日本屈指のコレクター。2016 年から限定的に作品を公開。2019年4月には東京・青山にあるスパイラルガーデンにて「OKETA COLLECTION: LOVE @ FIRST SIGHT」(一目ぼれ)と題したコレクション展を開催。

写真左からJean Pigozz(i Elle Macpherson), 1991
Jean Pigozz(i Heimut Newton and Mick Jagger), 1990
中央He Xiangyu(Ten Lemons), 2016
写真右 Stefan Brüggemann(Beats Per Minute Painting), 2019 
Stefan Brüggemann(Beats Per Minute Painting), 2019
正面に李朝の白磁が飾られた自宅玄関の様子。

俊二さん

古美術というか、骨董に関してはもう新たに生み出されるものではないですから、世の中にない魅力的なものを手に入れるという喜びが大きいですね。紀元前の中国のものも収集しています。日本の骨董も鎌倉から室町あたりのものは、その時にこれだけの凄い作品を作っていたという事実に感動しますね。それに対して、現代アートはアーティストが現存しているので、作家さんの展覧会がありますよね。すると作家さんと直に話すことが出来るので、彼らがどのような作品を作りたいのかも分かるし、より作品への理解を深めることが出来る。作家さんと共に自分も成長出来るという楽しみもあります。若手のアーティストが次第に活躍の場を広げていく成長を見るのも楽しいですよね。五木田さんなんかは2004年頃から作品を購入し始めましたが、今の活躍は大変なものです。この10年間の中でも、そのような作家さんは何人もいらっしゃいますね。」

聖子さん

「作品への評価は二人で近いものがあるようで、どちらかがこれいいんじゃない? と言うと、ほとんど一致すると思います。作品への意見が異なるということはほとんどないですね。違う時というのは、価格が少し高かったりする時かもしれません(笑)。」

俊二さん

「良い作品を手に入れるためには、とにかく数多くを見ることですね。ギャラリーや海外のアートフェアなどを回って、目を肥やしておく必要があります。数多く見ていくことによって見る目が出来てきます。買わなくてもいいので見て回ることが重要です。自分たちも最初はギャラリーも知らなかったので、まずは大手オークション会社などを頼っていましたね。」

聖子さん

「私たちはその時の流れというか、時代の気分などを強く感じるところがあるので、その時代の気分をより反映しているような作品をコレクションしたいと思っています。」

俊二さん

「以前はファッションの会社を経営していたのだけれど、今はもう完全にリタイアしてしまったので、アート収集がライフスタイルのようになっています(笑)。それでも仕事をしていたときよりずっと忙しくてね。国内のギャラリー巡りもするけれど、海外のアートフェアも毎月のようにありますから。2月にはロサンゼルス、3月は香港バーゼル、その後もパリ、スイスのバーゼルバーゼルなど行かなければならないところが多いんですよね。」

聖子さん

「アートに関心を持ち始めた方も、色々回って見ることで、その中からコレクターになる方も出てくるのかと。見ていればやはり欲しくなりますものね。」

俊二さん

「自分たちには作品を見るためのビューイングルームと自宅と両方ありますが、自宅もマンションなので、やはりスペースに限りがあり、そこに合わせたサイズのものを購入するのですが、コレクション展に出したいものはどうしても大きな作品が欲しくなってしまうんですね。そういった悩みはありますね。昨年開催した青山でのコレクション展にも新しくアートをコレクションすることに興味を持っていらっしゃる方にも来ていただいたようですが、そのような楽しみをより多くの方と共有できると嬉しいので、今年も4月にコレクション展を開催します。(左記参照)ぜひ皆さんいらしていただき、アートにより関心を持っていただくことで、コレクションすることの楽しさを少しでも知っていただけることを期待しています。」

  • 『Oketa Collection: Love @ First Sight』展(2019年4月17日〜4月27日)の会場。

  • 『Oketa Collection: Love @ First Sight』展(2019年4月17日〜4月27日)の会場 左から、草間彌生 《Flower》1985年、草間彌生《花(Pollen)》1984年、草間彌生《 南瓜(Pumpkin)》2015年

  • 左 Eddie Martinez, BH Stack(Wishy Washy), 2018
      右 Eddie Martinez, BH Stack #10( Positive Earth), 2018

  • 中国骨董コレクションの一部。

  • Mungo Thomson, November 14, 2016(The End is Near),
    2016 BE@RBRICK SORAYAMA × Daniel Arsham 1000%

Information

「A NEW DECADE by OKETA COLLECTION」

展覧会延期のお知らせ:
新型コロナウイルスの感染予防および拡散防止のため、展覧会の日程を延期させていただきます。新しい日程は調整中ですので、決定し次第、Oketa Collectionホームページにてお知らせいたします。

ARTIST

インタビュー先に作品を持ち込んでマタドールのように舞うザパタ氏。陽気で朗らかな性格が作品にも表れているようだ。

自由奔放な新表現主義の旗手

Domingo Zapata

陽気で朗らかな性格のザパタ氏。情熱の国スペイン出身の彼の描く作品は限りなく自由であり、過去のアイコンをも飲み込んで独自の世界を構築している。New York Post 誌はザパタ氏を「新時代のアンディ・ウォーホル」と呼び、ジョージ・ソロスやジョニー・デップなど名だたるセレブリティが彼の作品をコレクションしていることでも有名だ。来日中であった彼にお話しを伺った。

大切なのは自分がどう感じたか。ポジティブな気持ちを持ってハッピーに過ごす人生を表現したい。

「日本は本当に美しい国です。何を食べても美味しいし、プレゼンテーションも素晴らしい。その国独自の文化というのはとても刺激的であり、自分の作品も影響を受けています。スペインと日本の文化は非常に似ていて、共通点を多く感じているよ。自分の作品のマタドールや闘牛の文化はスペインの象徴であり、ピカソやゴヤなども同じように、その色の使い方、赤・黄・青などの色使いも大きな影響を受けています。自分はとにかく情熱的なものが好きで、自分自身が好きなものだけを描いていきたいと思います。その時々に自分の感じたことが重要なのです。原点はポジティブであること。自分は世界を変えることは出来ないけれど、ほんの少しだけ美しくすることが出来ると思います。小さいころから絵を書くのが好きでいたずらがきをして怒られていました。今ではもっと描いてくれと言われるけど(笑)。歴史的なアーティストと比べられても、自分はまだまだその域には達していない。アンディと共通することがあるとすれば、それはソーシャルなアーティストであるということでしょうか。陰に隠れてしまうのではなく、自分自身が前面に出て、様々なものをミックスするようにして自分自身のライフスタイルを作品に表現するようにしています。ピカソやダ・ビンチのモチーフを作品に取り入れるのは、歴史的なものと現代のポップなものを組み合わせることでそれらのコントラストを表現するのが自分のスタイルの一つ。自分の中では常に新しいテーマを探しています。好きなものを見つけたときにその感情をいかに表現するかを考え、見る者に感情の高ぶりを与えたいと思っています。作品の作り方は、常にスケッチブックを持ち歩くようにしています。それがある程度まとまったら作品作りに入るのだけれど、その時はすでにトランス状態に入るのでその表現方法はその時に感じている感情によるもの。今フォーカスしているのは女性の美しさ。今後は女性のヌードも描いていきたいと思っています。人生は短い、毎日同じ木を見ていてもそれを美しいと思えるかどうか、幸せに感じることにフォーカスすれば人生は変わるはず。それを広めていくことが自分の使命なのです。」

Profile

Domingo Zapata ドミンゴ・ザパタ

スペインのパルマ・デ・マヨルカ出身のアーティスト。ニューヨークを始めマイアミ、ロサンゼルスを拠点にデザインスタジオを構えている。これらのアトリエでは彫刻や新表現主義(Neo-Expressi oni st)の絵画を制作。油とアクリルを両方使い、マルチ・メディアやグラフィティ、コラージュを作品に多く取り入れる事で知られている。彼の作品には独自なスタイルで現実とファンタジーが塗り込まれ、観る者を彼の力強く美しい広大無辺の世界へと誘いこんでいく。作品の多くにはテキストや視覚的な手がかりが取り入れられ、彼の詩的な想像力を表現している。

常にハッピーでいることが大事というザパタ氏。日本の好きな物を聞いたところ満面の笑みで「ラーメン、寿司、和牛は最高だね。」と言う。趣味は食べること、だそうだ。

WORK OF ART

Domingo Zapata

最近の彼の作品は母国であるスペイン文化、アメリカンポップアイコン、そして現代社会における現象にフォーカスしている。2011年にWhitewall Magazine により「注目すべきアーティスト」と称されたザパタ氏。それ以来、彼の作品はTheNew York Times、Esquire Spain、Vanity Fair Italia、The New York Observer などの多くの国際的なメディアから賞賛されている。New York Post 誌はザパタ氏を「新しいアンディ・ウォーホルで、世界中のスター達を虜にしている」と宣言。2018年5月にはローマ法皇と共同で作品に取り掛かり、その映像がニューヨークのタイムズスクエア中で放映された。レオナルド・ディカプリオ、ジョニー・デップなど多くの著名人を顧客に持つ彼は、今後も世界を魅了していくことだろう。

“KEEP MY GUERNICA ALIVE”
サイズ300cm ×180cm

  • “MONA LISA”
    サイズ75cm ×100cm

  • 2019年8月“TIMES SQUARE MURAL”
    マンハッタンの中心とも言われるONE TIMES SQUARE ビルにミューラルを完成。PHOTO / JAMESTOWN

作品問合せ

One Avenue 株式会社

代表取締役社長 ギルフォイル・アレキサンダー
TEL.080-4440-9926

ARTIST

SNSなどを活用すれば、世界は遠くない
水谷吉法 フォトグラファー

  • 「HDR_nature」(2018) デジタルカメラに搭載された機能を利用した作品

  • 「Tokyo Parrots」(2014) 東京で異常繁殖したインコの大群を鮮やかに写し出した初期代表作。

水谷氏は、昨年世界最高峰の写真フェアPARIS PHOTOに出品するなど、ヨーロッパをはじめ海外でも高い評価を得ている写真家の一人だ。SNSを活用し、若くして海外進出を果たした彼に話を聞いた。

「学生時代、flickrなどに写真をアップしていたら海外から雑誌の掲載依頼が舞い込んだことがあったんです。写真集を作りたいと思っていたので、逆に自分から国内外の出版社に直接アプローチしてみました」

ミレニアル世代の彼、インターネットで海外とつながることは特別なことではなかった。英語が苦手でも翻訳ツールがあれば何とかなる。「国内の出版社は難しかったのですが、スイスの会社がいい返事をくれて出版できたんです」

国内の写真賞と並行して海外の写真賞にもインターネットからエントリーし、2014年ヨーロッパ随一の若手発掘写真賞Foam Talent受賞をきっかけに、一気に活躍の場が広がることになる。ギャラリーに所属している現在もHPなどにコレクターから直接書き込みがあるという。「9割が海外からです。作品は売っているのかなど気軽に聞いてくる感じですね」

日本人写真家が今後、世界で活躍するための条件を聞いてみた。「インターネットがあれば一人でもできることは多いです。もちろん運も大事。でもやはり大事なのは作品です。いい作品が撮れたらもっと多くの人に見てほしくなる。自ずと僕みたいに営業しようと思うのでは。『Tokyo Parrots』も Poetic! とか言われたりしますが、撮るときは泥だらけ汗まみれでした(笑)」

Profile

Yoshinori Mizutani

2013 年JAPAN PHOTO AWARD、2014 年Foam Talent を受賞。IMA gallery で2 回の個展の他、ロンドン、チューリッヒ、アントワープ、北京、ミラノ、パリなど世界各地で個展を開催。「都市と自然」をテーマに撮影を続けている。1987 年福井県生まれ。日本大学経済学部、東京綜合写真専門学校卒業。
www.yoshinori-mizutani.com

TOPICS フォトアート

アマナサルトが進化させるプラチナプリント

  • ©Elliott Erwitt_France. Paris. 1989.(Umbrella jump)_2014

  • ©Imogen Cunningham_Magnolia Blossom, 1925_2013

プラチナプリントという写真印画法をご存知だろうか。銀塩写真より昔からある技法で、モノクロームの繊細な階調表現と漆黒の奥深さが特徴。さらに、安定性の高いプラチナを感材に使用することから、500年に及ぶ耐久性を兼ね備えているという。独特の存在感を持つプラチナプリントによるアートフォトが、フォトフェアなどでも静かな人気だ。 日本最大のプラチナプリント工房を擁するプリント制作会社、アマナサルトは、2012年にベルギーのサルト・ウルビーク社と株式会社アマナとの合弁会社として設立された。同社は長年培ってきた技法に最新のデジタル技術を掛け合わせた世界初のテクノロジーを使い、プラチナプリントで写真表現の新たな地平を開拓している。

プラチナプリントの魅力を広く伝えるべく、アマナサルトでは世界屈指のアーティストとコラボレーションして少部数限定のエディションプリントやポートフォリオ集の企画、制作、販売を行っている。これまで手がけたアーティストは、イモージン・カニンハムに始まり、エリオット・アーウィット、杉本博司、荒木経惟、安藤忠雄ら28名。HPではこれらの希少な作品のほか、プラチナプリント制作プロセスも公開されているので、ぜひご覧いただきたい。

Information

アマナサルトの工房での作業風景。プラチナプリントは第一次世界大戦の影響によるプラチナ急騰で一度は完全に廃れ、1970年代にアメリカのアーティストたちが主導し復活したのだという。
© アマナサルト

amanasalto

TEL 03-3740-2032
http://amanasalto.com/

GALLERY

東京画廊2019年アート・バーゼル香港での展示風景。Courtesy of Tokyo Gallery + BTAP

アートで時代の先端を見つめ続ける

  • 山本豊津
    東京画廊 代表取締役社長

Profile

Hozu Yamamoto

東京画廊 代表取締役
議員秘書を経て東京画廊に参画。アートバーゼルをはじめ世界のアートフェアに出展。都市計画や銀座の街づくり等多くのプロジェクトに関わりつつ、アート活性のため大学などで講演活動も行っている。著書に「アートは資本主義の行方を予言する」(PHP 新書)、「コレクションと資本主義」(角川新書)。1948 年東京都生まれ。武蔵野美術大学造型学部建築科卒業。

未来の価値を築くアート収集

東京画廊は日本で初めて現代アートの企画展を行い、主に日本、韓国、中国の多くのアーティストを紹介してきた。アートのみならず経済や歴史にも幅広い知見を持つ山本氏に話を伺った。

「最近、若い方たちに頼まれて『アートの買い方』っていう講座をやっています。僕はまずアートフェアなどに行って、作品をとにかくたくさん見なさいと言います。そして気に入った作品の中から画廊の方の説明が一番しっくりきた作品を購入しなさいと。納得したものを買い集めていくと、その人独自のコレクションができます」

自分なりのコレクションはコレクター自身の表現でもある。

「織田信長や千利休、豊臣秀吉もコレクションで独自の表現をした人たちです。戦前の財閥にもコレクションで名を残している人も多い。美術館に寄贈したりすれば、それは後世の資産となるわけですね」

アート最前線の面白さ

東京画廊のような企画画廊やアートフェアは、アーティストの作品が最初に販売される場所だ。若手アーティストなど、まだ評価されていないアーティストの作品の場合、後に評価が大きく上がることもある。「例えば、友人が私から購入した李禹煥さんの作品が、三十数年後にオークションサイトで100倍の値をつけたこともあります。100%予測することはできませんが、儲けはコレクターに行きます(笑)」

新しいアートを見出すことがギャラリストの面白さだと語る。

「中心よりも周辺地域に新しく面白い美術が起こります。バーゼルのアートフェアでも、僕が見ているのはポーランドとかチェコ、スロバキア、チュニジアなどのアート。こんなもの見たことないなっていうのに出会うスリリングさが醍醐味です。先端を見るって資本主義にとって一番大事だし、人類にとっても変わらないテーマじゃないかと思いますね」

Information

東京画廊

TEL 03-3571-1808
http://www.tokyo-gallery.com/

第23回「Living Wellness in Luxury」に山本氏が登壇

「教会から美術館へ」

12月1日にB&B Italia Tokyoの青山ショールームで開催された住環境関連の世界のトップブランドが集うイベントにて、トークセッションに山本氏が登壇。アートマーケットの仕組みの他、アーティストとコラボしたファッションブランドの戦略など近年の動向について解説した。山本氏は中東のアートへの投資熱について、「石油資本が今後、資産価値を失う可能性があることから、リスクヘッジのためにアートに変えていっているというのが実情だと思う」と分析。ルーブル・アブダビや史上最高額で落札されたダ・ヴィンチ絵画についても触れ、「今、世界の都市は(観光の目的となる場所が)教会から美術館に変わってきている。アブダビも世界中の人を呼ぶために宗派を超えたアートを集めようとしている。もともと美術は宗教から産み落とされた落とし子ですが、今や“親”を超えて“子”が世界を凌駕する時代になっている」と語った。

GALLERY in N.Y.

日本の伝統文化を世界に発信
大西なな Onishi Gallery 代表

  • 金工作家の宮田亮平の作品「シュプリンゲン」。この作品はマンハッタンのアートコレクターに購入されている。

世界で現代アートの日本人アーティストが注目を集め、大変な高値で取引される一方、日本の工芸品など、伝統文化のアーティストの評価は上がっているものの、なかなか市場で紹介される機会は少ないという。NYでは日本人経営で日本人作家を主体に扱うギャラリーは数えるほどしかなく、それが市場に出回らない理由となっている。そんな中、チェルシー地区に15年前に進出したOnishi Gallery がメトロポリタン美術館との提携により、日本の伝統文化を広げる新たなプロジェクトを行うという。

Profile

大西なな Nana Onishi

Onishi Gallery 代表
金沢美術工芸大学を卒業、ギャラリーのオープン時から日本の伝統工芸作品を中心に扱い、15 年間、人間国宝作家の作品を中心に様々な種類の伝統工芸作品を海外の美術館やコレクターに紹介してきたという大西さん。プライベートの時間も、アメリカ人コレクター、富裕層との社交の機会を出来るだけ持つという。個人的にも、自宅にアメリカ人コレクターをお呼びする時のために、人間国宝作家の作品(今泉今右衛門、酒井田柿右衛門や徳田八十吉の作品など)をコレクションしている。(写真はニューヨークで活躍するインテリアデザイナーでバカラ・レジデンスの内装を手掛けたパトリック・ローン氏と撮影。)

メトロポリタン美術館で金工展を開催 日本工芸の海外進出と市場開拓を推進

「2020年10月から1年間、メトロポリタン美術館にて金工展の出展を予定していますが、取引のある日本人コレクターが、その全ての作品を買い上げ、永久所蔵作品として美術館に寄贈することを、ご承諾いただきました。本展には金工部門の人間国宝作家9名を含む全部で18名が出展します。本展開催にあたり、日本の伝統文化・芸術をアメリカで広めることを目的に、金工作家や日本の美術館学芸員を米国に招聘し講演会や実演を行う準備が進行し、米国の放送局がドキュメンタリーフィルムを作る計画もあります。また、今回は当ギャラリーのコレクターを本プロジェクトの開催期間中に日本にご案内し、アメリカ人富裕層に好まれる内容の文化・芸術関係のツアーを組むことを計画しています。さらに日本人富裕層の方々、コレクターをアメリカにお呼びする、同様のツアーも検討しています。例えばアメリカでは、富裕層のお宅にお邪魔しアートコレクションを見学する会などを考えています。アメリカ人富裕層の方々は、複数の美術館のドナーになっていることから、皆様お抱えの美術館学芸員がいまして、ご自宅のアートも学芸員に選んでもらうことから、ご自宅アートツアーでは、そういった学芸員の方々とともに、プライベート・ツアーを行いたいと思っています。」

「今回の日本の金工展を開催する意義は、その市場を開拓するのが日本人であるというところにあります。この15年間、多くの北米の美術館に当ギャラリーを通し日本の伝統工芸作家の作品を収めてきましたが、ほとんどのケースで作品を寄贈いただいたのは海外のコレクターでした。これまで、日本人コレクターが美術館に寄贈するというケースが作れれば、日本人が海外で日本の文化・芸術をサポートするという形が確立されるだろうと願ってきまして、この思いを当ギャラリーの日本人コレクターに汲んでいただき、本プロジェクトが実現する運びとなりました。これをきっかけに日本の伝統文化と海外の交流が盛んになり、大きく発展することを願っています。」

  • アートコレクターのマンハッタンの家には、九谷焼作家の三代 徳田八十吉と四代 徳田八十吉の作品が展示されている。

  • 加賀象嵌の金工作家で人間国宝作家の中川衛の作品が展示されている。

  • 日本の陶芸作品が数多く展示されているマンハッタンの家。

  • イサム・ノグチ、キキ・スミス、ヘンリ・マチス、アレクサンダー・カルダーなどのアート作品が展示されているマンハッタンのアートコレクターの家のリビング。

  • 金工作家で人間国宝の大角幸枝の作品「銀打出花器・瀑布」。

  • 金工作家で人間国宝の大角幸枝の作品「南鐐花瓶・遠い海」。

  • 四代 徳田八十吉の作品「彩釉鉢・太古の赤富士」。

  • 四代 徳田八十吉の作品「彩釉鉢・猩々」。

Information

Onishi Gallery

521 W 2 6th Street New York, NY 10001
nana@onishigallery.com
+1 212 695 8035

TOPICS アートフェア

日本最大級のアート見本市
Art Fair Tokyo 2020

  • 「アートフェア東京2019」の会場風景。AFT2019 Photo by offi ce TKD

日本最大級の国際的アート見本市「アートフェア東京2020」が今年も開催される。古美術から現代アートまで、多様な作品を鑑賞し購入できる同フェア。前回入場者数は6万人を超え、出展者総売上も過去最高の29億7000万円を記録している。

15年目を迎える今年は「with Art」がテーマ。会場は国内外のコマーシャルギャラリーや美術商が出展する「Galleries」、百貨店や工芸団体など多彩なアート分野の活動を紹介する「Crossing」、注目すべき作家を個展形式で発表する「Projects」の3セクションなどで構成される。

「Galleries」には、レントゲンヴェルケが11年ぶりに出展する他、アートフロントギャラリーや、日本の現代アートで重要な役割を果たしてきた山本現代・URANO・ハシモトアートオフィスが立ち上げたANOMALYが初出展を予定。総出展者の総床面積は過去最大の広さになるとのことで、今年もさらに多くの来場者が期待できそうだ。

「アートフェア東京2020」出展予定作家参考作品。

  • Philip Colbert『Relaxing Lobster』 2019-2020,Sho + 1

  • エキソニモ『キス、または二台のモニタ』2017年、モニター、メディアプレイヤー、サイズ可変

©exonemo, courtesy of the artist andWAITINGROOM

二条城にて初開催

作品名:雪花庵
作家名:板橋一広、浦一也
素材:雪花硝子(再生結晶化ガラス)
出展者:清昌堂やました

「artKYOTO 2019」

昨年9月に世界遺産・二条城にて「artKYOTO」が開催され、のべ9,633名の入場者がガラスの茶室展示や屏風へのライブペインティングなど歴史ある建物とアートを楽しんだ。総合プロデューサーの來住尚彦氏は「世界遺産でのアートフェアは他にはない。ぜひ毎年開催できたら」と語った。

Information

アートフェア東京2020

  • 会期:3月20日〜3月22日 ※一般会期
  • 会場 : 東京国際フォーラム ホールE /ロビーギャラリー
  • http://artfairtokyo.com