フィレンツェの北東、フィエーゾレの丘の上に佇む「イル・サルヴィアティーノ」。ルネサンス調の山荘風邸宅を改装したホテルは、まるで時間が止まったかのように荘厳な歴史の重みに満ちている。丘の頂へ続く小道の先、貴族の館を思わせる建物を目の当たりにすると、ルネサンス時代に引き戻されてしまう。
イル・サルヴィアティーノの歴史は古く、建物が建造されたのはルネサンスが始まる14世紀にまで遡る。オリーブを栽培する農家の質素な建物を起源とするが、1427年にフィレンツェの有力な銀行家、バルディス家の手に渡ると、豪華な邸宅として改装されることになった。
建物がイル・サルヴィアティーノと呼ばれるようになったのは16世紀になってから。当時、フィレンツェのウール産業で成功をおさめたサルヴィアティ家が邸宅の所有権を取得すると、莫大な私財を投じて敷地内をフレスコ画など豪華な調度品で飾り立て、ゲストを迎え入れる迎賓館を完成させたのである。
サルヴィアティ家が作り上げた迎賓の場としての伝統は、ホテルとして今、確かに受け継がれ、世界中から集まるゲストを暖かく迎え入れる。歴史が息づくイル・サルヴィアティーノで、この上ないフィレンツェでの休日を堪能したい。
イル・サルヴィアティーノの滞在の醍醐味、それは極上のサービスを享受することにある。とりわけ「サービスアンバサダー」と呼ばれるバトラーの存在は傑出している。
「伝統ある建物と文化を凝縮して、イタリアで最もラグジュアリーで快適なホテルを創造する」とは、オーナーのマルチェロ・ビゴッツォ氏の言葉。ルネサンス期から続く極上の空間を舞台に、アンバサダーが優雅な動作でゲストのリクエストに応える様は、まさにオーナーが描く理想のホテルの姿である。
そのサービスは実に多岐にわたる。ゲスト好みの快適な客室作りのお手伝いやレストランのアレンジはもちろん、街の案内やプライベートショッピングの同行もしてくれる。ただの”お供”にならないのは、彼らが文化や歴史、ファッションやアートに造詣が深いから。様々な分野のスペシャリストと過ごす時間は、これまでに味わえなかった満足をもたらしてくれることだろう。
フィエーゾレの丘、非日常の贅沢が絶景とクロスする歴史薫る邸宅。アンバサダーの優しさに、ふと自然に我が儘になれるのが、このホテルの魅力なのかもしれない。
フィレンツェから舞台はロミオとジュリエットゆかりの地、古都ヴェローナへ。歴史薫る街に溶け込む「パラッツォ・ヴィクトリア」は、2012年3月にオープンしたばかりのラグジュアリーホテル。古代ローマ時代の円形闘技場や中世都市国家の中心だったシニョーリ広場などに程近く、古都ならではの醍醐味を堪能できると人気だ。
14世紀に建てられた建物はそれ自体が貴重な存在だが、さらに驚かされるのが、周辺一帯が古代ローマ時代の遺跡の上に成り立っているということ。これらの遺跡は日常の生活と共存し、ホテル内の中庭や廊下、客室で、フレスコ画など貴重な遺跡を目の当たりにするのである。
ホテルでは博物館のように歴史を堪能できる一方、随所に取り入れられたモダンなインテリアとの対比も印象的だ。例えば、レセプションの奥に広がるラウンジバーは白を基調とした上質な空間。センスの良い音楽が流れるなか、大型のスクリーンにはポップな映像が映し出され、柑橘系の甘い香りとともにゲストを迎えるといった具合である。
悠久の歴史が流れる邸宅を舞台に、革新的なデザインとの調和に刺激されるヴェローナのホテルでの滞在。ここでは現在と過去が繋がっていることを実感できるはずだ。