ピエール・ガニェール 2019来日インタビュー
劇を観るような感動に浸る美食体験
世界を舞台に3つ星シェフとして名高い美食の巨匠、ガニェール氏。
「厨房のピカソ」の異名をとる彼の独自の料理哲学、そして料理への想いを伺いました。
喜びを与えるシェフの創造
フランス・パリに本店を構え、世界9か国で23店舗を展開する、ピエール・ガニェール。科学者と一緒に早くから分子ガストロノミーという科学的な料理法を取り入れた新しい料理スタイルを打ち出すなど、前衛的シェフとして知られ、多くの料理人たちに影響を与えてきた。自由で斬新な発想、かつ繊細な味付けと絵画のように美しい料理から、“厨房のピカソ”との異名も持つシェフの料理への情熱、フィロソフィーに触れてみた。
「私の料理は、ただひとつ、お客様を喜ばせたいというシンプルな気持ちから生まれます。それは、劇場に行って素晴らしい公演を観て感動を覚えるのと共通していて、私はレストランというステージで、料理を通して、お客様を感動させる物語を創作しています。レストランは“食べる”という行為だけ でなく、ゲストやスタッフとのさまざまな出会いがあり人生を映し出す場であり、心を豊かにし、穏やかな気持ちをもたらす、美しいものが生まれるところなのです」。
来日した際には、毎日厨房に入りスタッフとコミュニケーションを取りながら料理に全力投球。スタッフいわく、「有名シェフでありながら、ランチもディナーも厨房に立ち、どんなに遅くても翌朝は 疲れた顔をせずに、意気揚々と仕事をしているのですから頭が下がります 」と。そして料理を完成させた後は、必ずホールに出て各テーブルを回り挨拶もする。スターシェフの登場にゲストは歓喜し、握手や写真撮影を求められることもしばしば。そのすべてに快く応じる姿勢に、ただお客様を喜ばせたいとの優しさが伝わってくる。
良い環境がもたらすものとは
「心から人を喜ばせること、それが私に与えられた使命だと思っていますし、私の真の仕事だと考えます。自分の与えられた仕事にきちんと向き合い、誠実に取り組むことが大切です。接客サービスもそう。そのために信頼のおけるチームが必要とされます。いい環境、いいエネルギーを発する人たちと接することで、自分自身が安定する。心に余裕がなければ、人に何かを与えることはできません。またひとりでの時間、読書や旅行なども大切にしています。ちょっと旅行に関しては、行き過ぎかもしれませんね。仕事で世界中を飛び回っていますから(笑)。国それぞれに魅力がありますが、日本について私が感じたことは非常にコントラストがある国だと。たとえば 美しいものを作り出す面もありながら、雑多なものも混在。建物がごちゃごちゃした街中もありなが ら、一歩入ると静かな小径があったり。そういった都市の姿は面白いし、日本の文化や日本の方の時間のとらえ方なども興味深いです。そしてなにより、日本料理と食材、そして日本人の仕事ぶりに魅力を感じます。特に食材は素晴らしく、日本に来ることは、毎回それだけで も大きな喜びです」。
独創的な料理に感嘆
美しい日本料理や四季折々の食材からインスパイアされたというシェフが繰り出す料理とは。まず、目を引いたのが本日のコースの内容が書かれたメニュー。 そこには料理名のほかに、シェフが楽しそうに踊っている可愛らしいイラストが描かれていた。もうこれだけで、これから始まる料理への期待が高まり、ワクワクする。そうして始まったコースでは、木の切り株のようなインパクトのある器、懐石料理のようにいくつものお皿がずらっと並ぶユニークなスタイルの前菜、手巻き寿司のように、甘エビをエゴマの葉でくるんで いただく一品、チョコレートソースの肉料理、さらにデザートはテーブルに運ばれるまで秘密で……。料理が供されるたびに、「わ、きれい。え〜、なにこれ」と思わず声が出てしまう。見たこともない器や食べるのがもったいないと思える芸術的な盛り付けで驚き、独創的なスタイルや想像のつ かない味わい、食材の組み合わせでまた驚きと、サプライズ演出のオンパレードなのだ。「楽しい!お いしい! 次はなに!?」そんな言葉が頭の中で繰り返され、頬は終始、緩みっぱなし。まさに驚きと感動が絶え間なく押し寄せてくる、スペ シャルな体験。この誌面では伝えきれない喜びを、ぜひご自身で、また大切な人と堪能してほしい。
Profile
2010年3月、ANAインターコンチネンタルホテル東京36階に開業。「ミシュランガイド東京」で9年連続2つ星を獲得。世界各国で、数多くのお客様に食の喜びを提供する「ピエール・ガニェール」のレストランの中でも天空に最も近い超高層階に位置し、東京店ならではの研ぎ澄まされた料理に、スタッフが織り成すきめ細やかなサービス、洗練された空間、息をのむ素晴らしい景観を含め、感動を呼び醒ますような価値ある時間を提供してくれる。2019年6月2日までキャビアが主役の特別コース「MENU CAVIAR(ムニュキャビア)」を提供中。最高級キャビア「オシェトラ」と「バエリ」を全4皿に贅沢に使用。
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