新時代を切り拓く 賢者たちの言葉

コロナ感染症の蔓延が続き、全世界が停滞していたこの二年間。ただしワクチンの普及により、先進国、そして日本には光明が見え始めている。そんな中、各業界の先陣を切るリーダーたちは今、何を考え、どう行動しているのか。この先も大きな変革の時代が続くと考えられる中、先を見ている賢人たちから、未来へとつながるヒントを伺っていきたいと思います。

撮影:大橋マサヒロ

不動産が持つ本来の価値を高める事業を展開
株式会社レーサム 代表取締役社長 小町剛氏

1992年に創業したレーサム。2001年ジャスダック上場。2008年より東京・霞が関に本社を移す。主に収益不動産の市場形成を進めている。レーサムは社会的必要性のある事業開発を積極的に行い、既存の不動産を幼稚園・保育園に転用、700名近い児童の就園機会の創出を行う。さらに取り壊しの危機に瀕した築120年の京町屋を保全。海外のゲストにもお越しいただける旅館として再生させるなど、不動産の新たな価値を創造する事業を行っている。2018年に代表取締役に就任した小町氏にお話しを伺った。

社会的問題を解決するレーサムの魅力

「銀行で働いていた当時、ちょうど日本の金融と不動産は先の見えない時代でした。自分の銀行員としての仕事に疑問を持っていたときに、取引先としてレーサムを知りました。その時、レーサムは日本で初めて不良債権を買って、それを収益化させていました。なんて実務的なビジネスをしているのだろうと思いました。社会で困っていることに手を入れて、ちゃんと成果を出している。そういう風に見えたのがレーサムに転職したきっかけです。その後、リーマンショックを迎え、ご多分にもれず、レーサムも非常に厳しい状況にさらされました。そんな時、顧客の方々に色々なヒントをいただきました。その時、異口同音で答えられたのが、『我々は不動産を変化させていく力を求めています』ということ。ほんの少し先を見据えてそれを推し進めていくことで、当時の取り扱いでは一件5億くらいだったのが、20億、30億に変化していきました。お客様の階層も変化し、求められる事もより実利的で高度なものが求められるようになったのです。」

レーサムの大きな転換期となった時期

「自分がレーサムに入社したのは2005年なのですが、最初の転換期は1997年に、不良債権を某都市銀行から純粋な第三者として初めて買ったということです。その2年後に債権管理回収業務を正式に解禁するサービサー法が成立しました。また2002年に『REIT(不動産投資信託)』の市場が始まり、当時は大手を除くベンチャー系ではレーサムが市場に参入すると思われていました。『収益不動産』という言葉を実質的に作ったのはレーサムのようです。『不良債権』という言葉も同様で一時は市場を100%占めていた時期もありました。良かったのはここでレーサムが金融に走らなかったことだと思います。実業から離れなかったのが良かったですね。そういう背景もあって、『現実的に何かを良くしない限り、利益はいただけない』ということが身に沁みついています。その不動産を持つ本来の価値をどうやったら顕在化させ、それを維持向上させていくかということを見抜くことが大切です。レーサムでは『VALUE UP』という言葉が好きではなく、当社の掲げる『+re VALUE』とは大きく違います。大事なのは社会構造の変化を比較的短期に分析して、価値を見出すことと思います。最近の事例では100㎡17室の新築住宅を、300㎡7室に変えました。実に50億円の物件になります。レーサムでは2014年から300㎡の物件は取り扱い始めています。地域ごとに属性を調べ、物件の内装を重視することで、結果的にこの6年間、賃料は落ちず、ほとんど空きがない状況です。先の300㎡の物件は三ヵ月で全室入居し、20〜30代の方が多くを占めました。

時代の変化に応じて新しい不動産価値を考える

「顧客とのやり取りの中で、富裕層にとっての最大のリスクは何かというと『聞いていないこと』だと理解しました。不動産購入時に重要事項説明を超えたところで、良いところだけではなく悪いところを含め、真実を伝えることで顧客との距離が深まる、と思っています。レーサムの社員全員がそのような気持ちを持つように指導していますが、実際にはまだまだかなと思いますね。またレーサムは現実的に『この事業をしたい』という明確なものがあるわけではありません。社会の変化に応じて、需要に応じた不動産価値を創造していくようにしたいと思います。資産家の方は不動産を自分の資産の核(コア)にしたいと思っていらっしゃるので、簡単に売買したいわけではありません。ある資産家の方とお話して色々とご紹介するときにあまりピンときていなかったようなので、ふと『元気が出る物件ですか?』と聞いたら『そう!』とお答えいただきました。人によってこの『元気』の中身は大きく変わるのですが、それをどうやって感じさせていただくかが重要だと思っています。そして不動産を所有する以上、どこでも何らかのリスクは必ず存在します。ただ『あの会社は約束を守る会社だ』と言われるのがわが社の一番の喜びです。そのためにわが社は必ず真実を顧客に伝えるようにして、今後も事業を進めていきたいと思います。」

Profile

株式会社レーサム代表取締役社長 小町剛 Tuyoshi komachi
1972年生まれ。96年慶大法学部卒。三和銀行に入行。2007年レーサム常務取締役に。2018年代表取締役に就任。家庭では子供は6人いるため、休日はゴルフもせずに、子供と共に過ごすことが多いという。PTA会長なども務める。子育ては苦労ではなく、この上ない歓びであり、多くのことをもらっているそう。入学式、卒業式、父親参観日は必ず出席するという子煩悩な一面を持つ父親である。

Information

株式会社レーサム
〒100-0013 東京都千代田区霞が関3-2-1 霞が関コモンゲート西館36階
TEL 03-5157-8888(代表)  https://www.raysum.co.jp

形のない流体を操る技術
株式会社IEC 代表取締役社長 青木秀人氏

株式会社IEC、愛知県名古屋市に本社を置き国内外29ヶ所に営業所やラボを構える。「革新」「進化」「創造」の理念のもと、刻々と変化する国際社会に対して、独自の技術で流体を自在に操り、数多くの実績を積み上げてきた。株式会社IECの顧客目線に沿ったアイデアと、多様な技術を提供し続ける原動力を、代表取締役社長である青木秀人氏にお話を伺った。

IECの成り立ちと歴史

「自動車向け塗装ポンプを販売している商社に勤めていた初代社長、青木英一が1960年に名古屋アイ・イー・シー株式会社を創業しました。当時は自動車産業が製造工程をオートメーション化する前でしたが、独自の流体技術をトヨタ自動車へ売り込みに行ったところ、これからの自動車産業のオートメーション化には欠かせない塗装技術を評価いただき採用されました。その後は国内すべての自動車メーカー様とお取引するようになりました。今日では自動車産業にとどまらず、多岐にわたる国内外の産業分野において活躍の場を開拓しています。」

流体とは固形物以外のもの全て

「流体と言いましても、通常は皆ピン来ないと思います。水、塗料、粘土、接着剤、などこれらは全て流体です。この流体を一定量、時間、温度により右から左へ移す技術が流体技術です。自動車であればベーク塗装や内装パネルや天井材の接着ですが、鉄道、航空、医療、食品、住宅、電器などにも私どの多くの流体技術が生かされています。例えば、紙おむつや生理用品では、ギャザー部に伸縮性を持たせるためにホットメルト接着という技術が使われています。食品分野では錠剤薬やサプリメント、食品のコーティング技術では、衛生と健康面への厳格な生産条件をクリアする為最高度な設備を構築しており、また住宅設備分野ではソーラーパネルのガラスパネル接着から液晶テレビや携帯電話の樹脂塗装まで、IECの技術は日々の暮らしに欠かせないと言っても過言ではありません。普段目に見えないところで、多様な産業の基本技術と言えるのです。

何故自動車産業以外へ事業を拡大したのか

「自動車メーカーは同じような事業計画、タイミングで動き、その計画は2〜3年周期で増減があります。会社として安定的に事業を継続し発展させていく為には、その他の産業分野である、鉄道や航空、船舶、食品、飲料、医薬において製品のコーティングやシーリング、出荷ダンボールの面接着など、この20年くらいで幅広い分野を開拓してきました。現在の海外拠点は北米や南米、アジアに展開しています。自動車メーカーと二人三脚で歩んでいるようですが、決して誘われて展開したわけではなく、全て自力で判断し展開しています。」

「だからIECに任せている」この一言がうれしい

「当社が最も大事にしているのは「メンテナンス」です。これだけは他社に負けないと自負しています。私どもから販売、納入してからのアフターフォローが大事で、言わば「サザエさん」の中の登場人物、三河屋のサブちゃんのような御用聞きのような存在と考えております。もしかしたら、お客様よりも弊社のメンテナンスチームの方がお客様の現場に詳しいこともあるかと思います。正直、新しい機器を納入した後のメンテナンスはあまり商売になりませんが、地道にコツコツと現場の状況をフィードバックし、メンテナンスを続けることによってお客様との揺るぎない信頼感を築くことができたと言えます。先代からは『とにかくメンテナンスをしっかりやること。足元のものを直せなくて次のビジネスには繋がらない。』と常々聞かされていました。」人を倖せにするグローバル企業を目指して「昨年2020年11月に新技術を発信する拠点として『IEC Laboratory』を造りましたが、身体の内面から健康を届けたいとの想いから、ここに健康志向のカフェをオープンさせました。このカフェは当初、社員の為の食堂スペースとして想定していましたが、せっかくならラボがある地元の人が気軽に使えるカフェにと発想を転換し、地元の方々はもちろん、どなたでもご利用いただける「倖せ」をお届けするスポットとして活用したいと考えています。また、30拠点目にスパをハワイで開業する事になったのはある意味運命だったかもしれません。自動車産業に携ってきた創業者の青木潤二はアメリカに敬意と尊敬の念を抱いていたので、弊社の海外初拠点はアメリカのデトロイトでした。もちろん世界の自動車産業の中心でもあります。ハワイという土地は日本人にもアメリカ本土の人にとっても憧れの地で、先代はもちろん私もハワイが大好きです。ハワイを訪れると豊かな自然と地元の人からたくさんの『倖せ』をもらうのです。そのアメリカでもあるハワイに畏敬の念や憧れを持ち、私が頂く『倖せ』をさらに多くの方にも体感してほしいとの想いでREMEDY SPA HAWAIIを8月2日にオープンしました。今後は、弊社の強みである流体の先端技術とハワイに古くから伝わる伝統的なトリートメントを融合し、新たな美容液の成分を研究、製品を開発しようと思います。今までにない新たな癒しの空間を提供するという発想は、IECの社名の由来でもある
Invention=革新
Evolution=進化
Creativity=創造そのものです。」

自分の幸せからみんなの倖せ

「『幸(しあわせ)』が運命的な巡りあわせの幸せだとしたら『倖せ(しあわせ)』は相手のことを思い、喜んでもらおうとすることではないでしょうか。『倖せ』は与えられるものではなく、与えるものだと私は考えています。その想いから社会や地域に積極的に貢献し、事業を通してカーボンニュートラルやSDGsを実践、実現し次世代にクリーンで安心安全な世の中を残したいと常々考えています。社員一人ひとりがその家族や周りの人に、IECに在籍して良かったね、と言われるような存在の企業に育てたいと思い、自分一人ではなく周りの人みんなを、『倖せ』にできる会社を目指していきます。

新技術を発信する拠点IEC Laboratory

Profile

株式会社IEC代表取締役社長 青木秀人 Hideto Aoki
1963年生まれ。大学卒業後、U.S.A.LimestoneCollege&GracoInc.でのインターンシップを経て、タイでの派遣勤務を経験後、株式会社IEC取締役営業技術部長に就任。2007年より代表取締役社長を務める。自動車産業での事業に留まらず、常に他業種との業務拡大を目指し、2021年8月、30拠点目の節目に新たな事業としてハワイにスパを開業。

Information

株式会社IEC
〒465-0024 愛知県名古屋市名東区本郷2-160 
TEL 052-774-1011 https://www.iec-jpn.co.jp/index.html