「あそ1962」に乗って「阿蘇のカルデラ」へ。

あそ1962

九州は、列車の旅が面白い。
復活を遂げたSL、斬新なデザインの観光列車が各地をつなぎ、
様々な列車と土地の情趣を味わう旅。
のんびり車窓を眺めながら、時間に縛られず、
気ままに途中下車して広大な自然や懐かしい日本の原風景を堪能する。
ガイドブックには載っていない、オリジナル旅情。
まずは熊本から豊肥本線「あそ1962」に揺られて……。

 ある文筆家が言っていた。「最近の旅はつまらない。交通機関が便利になるのはいいが、いかに速く目的地に到着し、そこで旅を楽しみ、いかに速く戻るかに集約している。それでは、ただの旅と往復にしか過ぎない。そうではない。旅の醍醐味は、往路で旅の気持ちを盛り上げ、復路で楽しかった旅の余韻に浸る行程にあるのだ」と。日々時間に追われている現代社会において、玄関を一歩出たその時から始まり、旅への期待と余韻を少しでも長く味わう〝スローな旅〟こそ、思い出深い、真の贅沢なのではないだろうか。
 遠出の旅の主要な交通機関が航空機になった現在も、列車での旅は根強い人気を誇っている。過ぎ行く車窓からの眺めを楽しみ、土地の名産に舌鼓を打つ。決して急がず、いろいろな列車を乗り継ぎ目的地を目指す。気になった景色があったならその駅で降りてみるのもいい。そこでは予想もしなかった出会いがあるかもしれない。新しい世界が開けているかもしれない。これこそが旅の醍醐味だ。ワクワクとドキドキに彩られた、スローな列車の旅。

エルパティオ牧場阿蘇中岳の火口付近
/エルパティオ牧場では本格的なホーストレッキングを体験できる。
/阿蘇中岳の火口付近では、溶岩の中に高温の水が緑色に輝く神秘的な火口が間近に望むことができる。

 スローな列車の旅なら、南九州がおすすめだ。様々な趣向を凝らした路線が南九州全体をつなぎ、沿線に広がる素晴らしい風景とともに、列車の旅が満喫できる。そこで、豊肥本線を往く観光列車「あそ1962」で阿蘇を堪能し、今年100周年を迎え、SLからレトロな観光列車の旅が楽しめる肥薩線に乗り継ぎ、のんびりと南九州をめぐる旅をご紹介。
 まずは「あそ1962」で、熊本の名所、阿蘇のカルデラへ。JR豊肥本線・熊本駅と宮地駅を土曜・休日を中心に1往復する観光列車「あそ1962」。1962年(昭和37)製の車輌を使い、昭和30年代をイメージしてリニューアルされ、懐かしい外観に木材をふんだんに使った昭和レトロな車内から、阿蘇のカルデラを心ゆくまで眺める。
 また自転車を載せることもできるので、途中下車して阿蘇を廻るのも楽しい。本線では車輌がスイッチバックして山を登っていくのだが、途中で車窓の流れが変わり、なんとも趣がある。「あそ1962」を存分に楽しんだなら、列車を降りて阿蘇を巡ろう。

阿蘇神社の参道から続く門前町商店街日本有数の名水地
/阿蘇神社の参道から続く門前町商店街の町並み。レトロな景観を守り、訪問者を温かく迎える。
/熊本は日本有数の名水地。町の至る所で、美味しい水がふるまわれる。

SLで行く人吉。

SL人吉

今年復活を果たし、大きな人気を博している「SL人吉」。
スローな旅は、SLで人吉まで進む。

 「あそ1962」で阿蘇を満喫した後、南九州の旅は一路熊本駅へ向かう。そこには、永きに渡り愛され今年復活した「SL人吉」が待っている。漆黒の車体に白煙を纏い、勇猛に進むSLの勇姿。アールヌーボー調の展望ラウンジにゆったり腰を落ち着け、車窓を流れる球磨川の山水画のような景色を堪能する。日常では体験することのできない、非日常を味わう。これこそが、最高の旅の醍醐味だ。列車で巡るスローな旅でいいではないか。旅の目的は楽しむことにあるのだから。スローな列車の旅は、人吉へと続く。

トンネルに吸い込まれていくSL人吉おごっつお弁当
/轟音を響かせてトンネルに吸い込まれていくSL人吉。
/列車の旅の醍醐味の一つ、車内で振る舞われる名物「おごっつお弁当」は格別の味。

人吉温泉に泊まる。

清流山水花 あゆの里

一日の旅を振り返るには、温泉宿がいい。
心地よい温泉に浸り、地元の幸を堪能する。
そして今日の一日の余韻と、明日への期待と。
旅は、まだまだ終わらない。

 列車に揺られ、風情あふれる町並みを散策し、地元の幸を堪能した今日一日は、本日の到着地、熊本県人吉温泉でゆっくり思い返す。
 そんな旅人の疲れを心地よく癒す温泉旅館「清流山水花 あゆの里」。客室は和のテイストを基調にし、すべてに異なる趣向が凝らされている。その中の一室、温泉露天風呂付和洋室は、和のくつろぎと洋の快適を兼ね備える。テラスでは、夕闇に仄かに浮かび上がる幻想的な人吉城跡を望み、日本三急流に数えられる球磨川の流音に包まれて至上のひとときを過ごすことができる。人吉の湯は、とろみのあるナトリウム泉質で新陳代謝を促し、神経を休めるほか美白効果もあり、湯上がりはこの上ない心地よさを体感できる。
  温泉で汗を流したあとは、旬の素材をふんだんに使った郷土料理をいただく。鮎の塩焼きや鮎の風味を活かした鮎せごしなど球磨川の天然鮎の味わい、近海のお造り、そして球磨牛の料理など、地元球磨の恵みを堪能する喜び。そしてラウンジのBAR「木ゆ うばかわ綿葉川」で寛ぐ。ここでは地元の焼酎のほか、豊富なセレクトのワインセラーも用意している。
 身体を休め、地元の味で満たした後は、部屋で球磨川の響きに身を浸しながら、未だ見ぬ明日に思いを寄せる。なんと素晴らしいスローな旅。

露天風呂 球磨川
客室
郷土料理

/球磨川の流れと自然を堪能しながらの露天風呂は格別。
中上/日本三急流に数えられる球磨川。
中下/和のくつろぎと洋の快適さを取り入れた客室。ここでは、旅の思い出を一層深いものにする。
/地元の幸をふんだんに使った「あゆの里」自慢の郷土料理。

INQUIRIES

あそ1962 / SL人吉

九州旅客鉄道株式会社東京支店

http://www.jrkyushu.co.jp/tokyo/

清流山水花 あゆの里

熊本県人吉市九日町30 / TEL:0966-22-2171

http://www.ayunosato.jp/