ヨガインストラクターと金沢での再会

冬の金沢は綺麗な雪景色だった

金沢での講演に招かれたのは久しぶりだった。「せっかくだから」と主催者に言われ、前日の午後に小松空港に到着し金沢へ向かう。
以前よく泊まっていた航空会社系のホテルにチェックインした。立地もいい上に部屋もきれいでお気に入りのホテルだ。そして、うれしいことに併設されているジムの設備が豪華でさらにレッスンも充実している。関係者との会食の時間までは十分ある。「ジムで汗を流そう」。そう決めた。
5階にあるジムに入り、思わず声をあげた。「あっ」。すると、インストラクターの女性が「ひさしぶりー」と声をかけてくれた。ボクは偶然の再会にしばらく呆然としていたのだが、彼女は元気な声で「これからヨガのセッションが始まるから、参加していったら?」と言った。変わらず、明るく天真爛漫な女性のままだ。

彼女との出会いは、5年前

親しくしているメディカルトレーナーに紹介された。
「モデルをしながらヨガインストラクターをしている女性がいるの。私の紹介ならプライベートレッスンもしてくれるよ。健康にいいからはじめてみたら? 有名大学を出ている才女よ。お好きなタイプかもね」。
初めてのヨガに戸惑いもあったが、チャレンジしてみることにした。そして、すぐにハマった。なんにでも、ハマりやすい性質は相変わらずだ。
何度目かのセッションの後、食事に誘った。まっすぐに伸びた長い髪が綺麗だった。そして、アニバーサリーを一緒に過ごす関係になった。気分屋の彼女に振り回されたが、それも楽しい時間だった。
しかし、関係は長く続かなかった。
彼女から突然、「金沢に行くことにしたの。教えてもらった先生が新しいヨガスタジオをオープンすることになったから、本格的に手伝って-と言われて」と言われたのだ。そして、彼女の方から別れをきりだした。

彼女のセッションを受けるのは久しぶりだ。相変わらず、しなやかなスタイルが綺麗だった。
「今夜、時間あるの? 久しぶりだから飲まない?」 いつもは、僕が誘っていたのに、今日は彼女からだった。
「会食が終わったら、ホテルに戻ってくる。その前に電話するよ」。

北陸新幹線で北陸は変わるのか?

明日このホテルで開催される講演は200名を超える参加者が申込みをされているようだ。北陸新幹線の開業を控えた北陸の投資熱が熱いことを象徴している数だ。
北陸エリアはにわかに活気付いている。長野新幹線が延伸される形で北陸新幹線が誕生する。途中の主要停車駅である、富山駅や(とりあえずの)終点となる金沢駅の周辺は、これを機に開発が進んでおり駅前の雰囲気は大きく変わった。それに伴い、金沢駅前エリアの地価の下落率は大きく改善し、ほぼ横ばいにまで好転した。
地方都市と首都圏を結ぶ新幹線の開通は、経済的な期待が持てる反面、ストロー現象による流出が増えることも予測され、効果を出すことはそう簡単ではない。実際、近年本州や九州の各地方都市まで新幹線が延伸されたが、それらの地域の人口が継続的に増えた例は見られない。どこも行政によるPR効果が効いて一時的に観光客は増えるものの、継続的な経済効果を生むまでには至っていないようだ。だからこそ、北陸新幹線の開通の際にはこれまでと異なる展開を期待したい。
幸い今の日本経済は好景気基調にあり、大手企業を中心に企業業績もよい。こうした勢いが、新幹線開通に伴い北陸エリアに波及してくれることを願いたい。
北陸新幹線の運行が開始されるのは、2015年の春。

1401号室

「明日の講演者がきれいな女性とバーに居た、となってもいけないから、部屋に来る?」と伝える。
「ずいぶん、ストレートね。でも、いいよ。自分の身の安全は自分で守るから。で、何号室?」 このホテルの高層階01号室は二面に窓が広がるコーナーの部屋で、そこからは絶景の立山連邦の雪景色が見える。だから、いつもこのタイプの部屋をリクエストする。今夜は1401号室だ。
ルームサービスで取り寄せたシャンパンを飲みながら、近況や思い出話に花を咲かせた。交際していた頃と、変わりのない時間が過ぎていく。変わったのは、彼女の長い髪の毛が、ショートヘアになったことだ。
「ずいぶん、髪の毛を切ったね。自慢の髪だったんじゃないの?」と聞いてみる。
「そうね。実は、こっちに来たその日に切ったのよ。なんだか、別の自分を生きてみたくて」。
どうしても彼女に質問をしたいことがあった。「なぜ別れて、急にこっちに来ることにしたの?」 「それは、ナイショ。ちょっとくらいミステリアスな事があった方がいいのよ」と窓の外に視線を投げた。
「もっといろいろと話そうよ。今夜は、 あの頃の二人に戻ろうよ」。
二人の間に、沈黙の時間が流れた。ボクは、彼女の手を握ろうとした。
「それはだめ。わたし、あれからすぐ結婚したの。主人と5歳の子供が待っているから」。
彼女は立ち上がった。
「えっ。すぐ、結婚したの?5歳の子供って?」

せっかくの金沢での夜だ。もう一度夜の街に出かけようかな。
外は、雪が降っているようだ。寒いだろうな。

吉崎誠二

吉崎誠二 Seiji Yoshizaki

ディー・サイン不動産研究所 所長

(株)ディー・サイン 取締役
早稲田大学大学院ファイナンス研究科、立教大学博士前期課程修了。
船井総合研究所Real Estateビジネスチーム責任者を経て現職。

著書:『大激変 2020年の住宅・不動産市場』
『消費マンションを買う人、資産マンションを買える人』など9冊。
連載:「ダイヤモンド(WEB版)」など月6本。
不動産・住宅関連分野が専門領域。