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妖艶なる光の世界

妖艶なる光の世界

消えゆく職人の尊い営み

妖艶なる光の世界
柔らかなスクリーン展より。
(c)ERIKO HORIKI & ASSOCIATES

銀行に4年間勤めた後、知り合いのつてで転職した先が、たまたま手漉きの和紙の商品開発をする会社。何にでも興味があったので、事務と経理で入社したにもかかわらず、デザイナーたちが越前に和紙を漉きに行くというので、バケツ洗いでもいいからと同行させてもらいました。 冬のもの凄く寒い時期。荘厳な空気が漂い、外気よりも寒い冷蔵庫の中のような工房で、職人さんたちは触ると痛いような氷水の中にずっと手を浸し、もくもくと作業をされている。その姿はとても衝撃的でした。過酷な条件の中で1500年もの間、この労働が続けてこられたことに尊さを感じたのです。
伝統を広げていく会社に入社できてよかったと喜んでいた矢先、会社が2年目で閉鎖。いくら手漉きでいい和紙をつくっても、半年後、1年後には機械でできた類似品が店先に並ぶ。価格競争には勝てなかったのです。職人さんたちの尊い営みがこのようにしてなくなっていくことを知り、初めて問題意識を持つようになりました。誰かになんとかしてほしかったけど、誰もなんとかしてくれなかった。もう自分でやるしかないと思い、自ら和紙と向き合う決心をしました。24歳の時です。

「移ろい」を演出する和紙

昔から和紙は伝統と言われています。それは長い年月、親しまれ、愛されながら使われているからに他なりません。例えば、日本家屋には和紙を用いた障子が不可欠です。障子には緊張感をもって垂直に交わる白木の格子に、柔らかい温かな白い和紙が貼られ、その姿だけでもシンプルな究極の日本の美学といえます。
魅力はそれだけではありません。例えば、紅葉の季節には部屋の中に庭の紅葉の赤い光が障子越しに入ってくる。さらに障子は、満月の月明かりや太陽が雲に隠れる気配を伝えてくれます。太陽の光を介在し、時の移ろいを感じさせてくれるのが障子なのです。
しかし、現代の空間を振り返ってみると、地下の商業空間には窓さえありません。都会のマンションでもビルが密集しているために、窓や障子はあっても、障子を開けたら窓の向こう数十㎝先に隣接するビルの壁がある。そんなところに太陽の光なんて入ってきません。だとすると、現代建築の中では、昔と同じように情緒とか情感といった時の移ろいを演出しようとしても、今まで通りにはなかなかいかないのです。

和紙と運命を共にする光

妖艶なる光の世界
SHIRABE (c)YAMAGIWA

こうした現代社会にあって私が取り組むのは、和紙自体に移ろいを持たせるように漉くということ。そして、その和紙を使って日本人が昔から愛し親しんできた情緒や情感を表現できないか。つまり、和紙を通じて季節による移ろいや時間の経過を感じてもらう。これこそが私が和紙と向き合う目的なのです。
このような私の取り組みにおいて、不可欠な存在といえるのが光です。和紙にとって光は命の部分。和紙は光が当たって初めて呼吸を始めるのです。そもそも太陽や月の光は地球上のすべての生き物に命を与える存在ですが、それは和紙にとっても同じことがいえるのです。だから私がつくる空間も同じ。光があって初めて空間に血が通い出す。その空間が生きるも死ぬも、最終的にはライティング次第なのです。
人間の肉眼では光はかたちとしては見えませんが、影を見ることはできます。影を見ていると光の状態がよく分かるので、光を演出しようとするときは、影に着目して、必要なところに光を加えながら演出をしていくことが重要です。

暮らしで活かしてこそ技は文化に

基本的に210㎝×270㎝という大きな和紙をつくっていることから、ホテルやレストラン、空港など公共空間や商業空間の演出が多くなります。また、どうしても露出が多いために、こういった活動が目立ってしまいます。もちろん、特別な場所で特別な和紙を使って空間を演出することは、往々にして課題が与えられ、その課題を克服するために技術が磨かれるという意味ではとても大切なことです。
昨年、起業から25年を迎え、和紙をつくる技術が蓄積されてきたことを実感できるようになりました。燃えにくい、破れにくい、さらには汚れにくいといった、これまでに蓄積した和紙づくりの技術は、未来へ繋いでいかなければなりません。技術というのは暮らしの中で活かしていくことでこそ、文化として定着するものではないでしょうか。
5年ほど前から照明器具やサイドテーブルといった作品に着手し、さらに一昨年にバカラさんとのコラボレーションで、対極の素材である和紙とクリスタルを融合させたシャンデリアを制作させていただいたのも、こういった想いがあったからです。

和紙に宿る精神性

妖艶なる光の世界
Baccaratライティングコレクション「Sora(宙) 旋律 ランタン」。
(c)Baccarat

私自身、和紙をつくるだけの作家やデザイナーという認識はありません。私は紙を漉くという技術に拘って、伝統産業に着目していて、技術を未来に繋いでいかなければならないという認識を強く持っています。
同時に、元来、和紙づくりの職人さんたちが抱いていた紙は神に通じるという考え方. 例えば、年末に障子の紙を貼り替えるのも、白い紙で空気を清浄にしてから新しい年神様を迎えるためですし、祝儀袋でお札を渡す際に白い和紙でくるむのも、不浄のお札を浄化するためですが、そういった日本の伝統産業にある精神性や美学もしっかりと伝えていかなければならないと考えています。
和紙を見てきれいだと感じてもらうことは大切なことですが、表面的にきれいなだけでは駄目なのです。和紙に光が命を吹き込み、その結果として、場の空気や気配までを創造する。そこに和紙の背景にある精神性が伝われば私の本望です。


妖艶なる光の世界

堀木エリ子
堀木エリ子&アソシエイツ

「建築空間に生きる和紙造形の創造」をテーマに、2700×2100mmを基本サイズとしたオリジナル和紙を制作。その作品はスケール感を活かし、光壁やタペストリーなどとしてダイナミックに建築空間に利用される。
1962年京都生まれ。


Baccarat  煌めくクリスタルが演出するバカラシャンデリアの世界

バカラの伝統を受け継ぎながらも進化するシャンデリア「ゼニス」

Baccarat  煌めくクリスタルが演出するバカラシャンデリアの世界
バカラと堀木エリ子氏とのコラボレーションで生まれたライティングコレクション「Sora(宙)」。太陽の光が広がるリズムをイメージしたランタン「旋律」¥10,080,000(写真手前)と月からこぼれ落ちる雫をイメージしたシャンデリア「雫」の2作品からなる。和紙とクリスタルという、異素材の融合が柔らかな空気感を演出する。

クリスタルを用いた独特の世界観を繰り広げる「バカラ」。ビジュウやテーブルウェア、オーナメントなど、幅広いラインナップで、1764年にフランス東部のロレーヌ地方のガラス工場として誕生以来、世の女性達を魅了し続けている。
中でもライティングに関しての歴史は古い。ベルギーのガラス・クリスタル工場を所有していた事業家エメ・ガブリエル・ダルティーグがバカラ村のサント=アンヌ ガラス工場を買い取り、クリスタル工場として再稼働してからわずか11年目の1827年、バカラはフランス産業製品博覧会において、フランスのクリスタル工場として初めてシャンデリアを発表した。さらに、1855年には、第1回パリ万国博覧会において、高さが5メートルを超える大燭台と140灯のシャンデリアを発表。その技術と芸術性の高さを世の中に知らしめたのである。
バカラのシャンデリアのアイコンとなるのが「Zenith(ゼニス)」コレクションだ。光り輝くクリスタルが彫刻的とも言える美しさを放つコレクションは、細部への精巧緻密な技術にもこだわる。例えば、どのタイプにも中央にカットクリスタルの円柱が貫き、美しさを際立たせるとともに、ケーブル類を巧みに隠す役割を果たすといった具合。一つひとつのパーツに目を向けると、多面体にカットされたクリスタルや輝くペンダントなど、どれも繊細で美しく、バカラのシグネチャーであるオクトゴン(八角形)のレッドクリスタルパーツがさり気なく混じっているのも魅力的だ。


ゼニスはバカラの伝統を受け継ぐ正統派とも言えるシャンデリアだが、フィリップ・スタルクがブラッククリスタルをふんだんに用いて現代風に生まれ変わらせた「ブラックゼニス シャンデリア」は、これまでのシャンデリアにはない漆黒の世界観を創造し、ブランドのアイコンに新しい解釈をもたらした。さらにフィリップ・スタルクとのコラボレーションで生まれたフロアランプ「マリー・コキーヌ」は、アイボリー色の傘の下にゼニスのシャンデリアと革製のパンチングバッグを組み合わせた、ユニークで視覚的なインパクトがあるシュールな作品となっている。
前頁のインタビューにご登場いただいた堀木エリ子氏も、バカラとのコラボレーションで、和紙の高い技術を活かしたライティングコレクション「Sora(宙)」を発表している。これはバカラがミラノサローネ2011/ユーロルーチェで7組のクリエイターと組んだバカラハイライツのひとつである。

Baccarat  煌めくクリスタルが演出するバカラシャンデリアの世界
ライティングコレクション「Sora(宙)」のシャンデリア「雫」は、堀木エリ子氏とのコラボレーションでうまれたもの。和紙とクリスタルを融合したシャンデリアとなっている。
¥10,080,000
(c)Baccarat

「雫」と題されたシャンデリアは、クリスタルと和紙とを融合させることで、月からこぼれ落ちる雫を表現したもの。クリスタルの表面の凹凸に合わせて、ピンセットを使って細い糸を漉き込むなど、繊細で高い和紙づくりの技術がいかんなく発揮され、その結果、和紙から放たれる光が周囲に連なるクリスタルを柔らかく照らし、言葉に言い表せない程の優しい空気感を生む作品に仕上がっている。
「和紙はすべて水の力を借りて生まれる水の芸術。一方、クリスタルは火の加減によってでき映えが左右される火の芸術です」と話すのは、この作品の制作をした堀木氏。「日本の伝統産業とフランスの伝統産業、柔らかい素材と固い素材、軽い素材と重い素材、透明な素材と不透明な素材......。すべてが対極に位置する和紙とクリスタルという素材をコラボレートさせることで、初めて見えてくることがあった」と、堀木氏はこのコラボレーションがとても有意義だったと後に振り返っている。
クリスタルが妖艶に煌めくバカラのシャンデリア。伝統を守りながらも革新を繰り返すその姿に、時代を超越した永遠の輝きを見つけた気がする。


バカラショップ 丸の内
TEL 03-5510-1455
http://www.baccarat.com

YAMAGIWA  百花繚乱。共鳴する世界のシャンデリア

MARIA THERESA

YAMAGIWA  百花繚乱。共鳴する世界のシャンデリア

ダイヤモンドのような精緻なカッティングで知られるボヘミアン・クリスタルガラスが優雅な光のシンフォニーを奏でる「マリアテレサ」。その歴史は古く、1740 年、オーストリアの女帝マリア・テレサがガラス工芸で知られるボヘミア地方の職人に作らせたシャンデリアを由来とする。金属アームを澄み切った透明感のあるクリスタルガラスで覆い、両端を花を模したガラスの飾りで留めるという手の込んだ技法が駆使されている。もっとも豪華で正統的なシャンデリアと言われ、実際、パリのベルサイユ宮殿でも使用されているという。チェコ製。


PREARO design by Prearo Studio,L. Centofante

YAMAGIWA  百花繚乱。共鳴する世界のシャンデリア

プレアロ社は1938年、ベネチアで創業された70 年以上の歴史を有す工房。インテリア照明の分野では常に時代の中心にある。シャンデリアを中心に、クラシカルなものからコンテンポラリーなものまで、幅広く扱い、熟練の加工技術はプレアロ社の独創性とデザインの質を高めている。イタリア製。


FLOS model 2097 design by Gino Sarfatti

YAMAGIWA  百花繚乱。共鳴する世界のシャンデリア

デザインはイタリアの照明器具メーカー「アルテルーチェ」の創始者で、照明デザインのエキスパートでもあるジーノ・サルファティ氏。このフロス社のモデル2097は、ヨーロッパの伝統的なシャンデリアの形態をモダンデザインの文脈で読み替えたエポックメイキング的な傑作と言われ、1958年に発売されたにもかかわらず、いまだに新鮮さが漂う佇まいで人気を博す。徹底した合理主義的な発想で、ソケットが剥きだしの灯具に既成パイプを大胆に組み合わせるが、豊かさと優美さは時代を超越して息づいている。イタリア製。


YAMAGIWA  百花繚乱。共鳴する世界のシャンデリア

YAMAGIWA 東京ショールーム
YAMAGIWA Tokyo Showroom
TEL 03-6741-5800
http://www.yamagiwa.co.jp/