PAVONE PRESENT
PAVONE SELECTION
新着記事 カテゴリー 新着記事

オーストラリア式 エピキュリアン ライフ

オーストラリア式 エピキュリアン ライフ

いまや、オーストラリアは世界中のグルメファン垂涎のデスティネーションの一つだ。
シドニーやメルボルンなどの大都市では、世界有数のトップシェフたちの店が、世界中から訪れるゲストで毎日にぎわっている。 オーストラリアの人々の豊かなライフスタイルとともに進化した食の形、- モダン・オーストラリア- の世界を堪能する。

※エピキュリアン: 快楽主義者・享楽主義者の意。転じて、人生をより楽しく生きようとする人々。特に食の楽しみを謳歌する人々のことを指す(いわゆる食道楽)。

「世界一おいしい朝食」 が意味するもの

「世界一おいしい朝食」 が意味するもの「世界一おいしい朝食」 が意味するもの「世界一おいしい朝食」 が意味するもの「世界一おいしい朝食」 が意味するもの

今、オーストラリアの食が注目を浴びている。
野生動物たちや、ブルーマウンテンズ、ゴールドコーストやグレートバリアリーフなどの壮大な自然の光景によって語られてきたオーストラリアの魅力が(もちろん、今もそうなのだが)、"モダン・オーストラリア"という言葉に代表される「食の楽しみ」によっても評価されるようになったのはいつ頃からだろうか。
オーストラリア人の食に対する意識は1980年代から少しずつ高まり、ここ20年で本格的な進化を遂げたという。
 潤沢な天然資源や羊毛産業などによって、つねに経済的な豊かさを誇り、食料自給率は平均的に300%近くにものぼるこの国は、大いにそのポテンシャルがあったとはいえ、世界の人々をも魅了するような食の国として知られるようになったのはなぜだろうか。
今回、シドニー、メルボルン、そしてグレートバリアリーフの二つの島々をめぐり、数名のオーストラリアを代表するトップシェフたちに出会うことができた。彼らの言葉や街の様子を通して、その秘密を探っていきたいと思う。

「世界一おいしい朝食」 が意味するもの「世界一おいしい朝食」 が意味するもの「世界一おいしい朝食」 が意味するもの「世界一おいしい朝食」 が意味するもの

今回シェフたちに会って何よりも興味深かったのは、一人ひとりのシェフが異なる食のバックグラウンドや世界観を持ち、食に対するアプローチがそれぞれに自由で多彩であったことだ。しかし、どのシェフも目指すべきことは一つ。あくまでも、食は楽しく、おいしく、大切な人たちととっておきの時間を共有するためのもの、ということだ。
そこに見えてきたもの― モダン・オーストラリアとは、自然とのふれあいをこよなく愛し、週末には戸外で仲間たちと集い、時を忘れて楽しく過ごすオーストラリア人のライフスタイルとともに発展した料理の形なのだ。
日本でもセンセーションを巻き起こした「世界一おいしい朝食」。bills のオーナーシェフ、ビル・グレンジャーが生みだしたものも、決して豪華な朝食ではなく、一日を楽しく過ごすための朝の始まりにふさわしい食のスタイルだ。洒落た空間で、おいしいパンケーキとコーヒーで過ごす、とっておきの時間。これもまた、モダン・オーストラリアの一つの原点といえるような気がする。
美しい自然も、お酒も、そして、テーブルを豊かにする語らいも...。食を楽しむためのすべてのコンテクストがそろった「エピキュリアン・ヘブン」、オーストラリア。『人生をより楽しく生きようとする人々。特に食を謳歌する人々』を指す「エピキュリアン」たちの真のライフスタイルがそこにある。そして、これこそが本当の意味での〝生活の豊かさ.なのかもしれない。(実はシェフたち自身が最もエピキュリアンだった!)
毎日を楽しむためのおいしい食事。おいしい食事をエンジョイするための毎日―。この幸せなスパイラルは、これからもオーストラリアの食文化をさらに豊かにしていくに違いない。

「世界一おいしい朝食」 が意味するもの「世界一おいしい朝食」 が意味するもの「世界一おいしい朝食」 が意味するもの「世界一おいしい朝食」 が意味するもの

エピキュリアンたちの饗宴 TETSUYAʼS

食材たちとの一期一会 ― テツヤ流テーブル・マジック ―

TETSUYAʼS

「料理は100%与えるもの」という哲学を貫く和久田哲也氏。
自らがおいしいものや素材に出会った時の感動を人にも惜しみなく分け与えたいという思いから出発するテツヤ氏の食の世界。
究極の"おいしさ"とは何だろうか。

Tetsuya Wakuda

TETSUYA'S オーナーシェフ
浜松出身。スーツケース一つと料理への情熱だけをたよりに22歳で渡豪。シドニーのレストランで下働きをしながら初めて仏料理の基礎を学ぶ。この頃より、すでに日本料理の要素を取り入れた独自の料理スタイルによって才能を発揮し始める。1989 年、TETSUYA'S の前身ともなるレストランを開店。2000年にシドニー中心街に移転。以来、世界有数のトップシェフの座をひた走る。2010年にシンガポールにオープンしたWaku Ghinとの間を行き来しながら世界中を駆け巡る。

TETSUYAʼSTETSUYAʼSTETSUYAʼS

4つ目の皿は、テツヤ氏を一躍有名にした一皿。タスマニア産オーシャントラウトのコンフィ。低温でじっくりと加熱した身は全体が生のままのように軟らかい。刻まれた塩昆布が見事なアクセントだ。
最適の料理法と温度・時間を見つけるために数百・数千回試みたという。

じっくりと火を通したフラウンダー(カレイ・平目の一種)、ヤマイモと貝柱のニョッキとともに。(5皿目)

ニュージーランド産手長海老、ウニとラディッシュとともに。(3皿目)

TETSUYAʼS
美しく洗練されたサービスとともに、総合的にゲストをもてなす流儀は、さすが日本人シェフならではだ。

 TETSUYA― この一人の日本人の名前がこれほどまでに世界のグルメ界に影響力をもたらすことになろうとは誰が想像しただろうか―。
シドニーの中心街にある和久田哲也氏のレストランTETSUYA'Sは、2008年シドニーの高級紙による『今年のレストラン』に選出。英国の「世界最高のレストラン50」では、2002年以来、常連として名を連ねている。オーストラリア国内はもちろん、世界中のグルメたちがテツヤ氏の料理を求めて訪れるため、予約を取るのが最も困難な店の一つとしても知られる。いまや、世界中で「テツヤ」の料理とスタイルを味わい、知ることこそが、ハイエンドな紳士淑女たちのステータスとして認知されているといっても過言ではない。
シェフのおまかせコースは、およそ10品からなり、ワインコースもリクエストすると、ソムリエが一皿ごとに選んだ十数種類のワインとともに2-3時間以上をかけて供される。フレンチをベースにしたテツヤ氏の皿には、ありとあらゆるオーストラリアの食材が目にも鮮やかな姿を現す。まさに食のエンターテイメントなのだが、決して"エンターテイメント"などという言葉ではくくれない余韻を醸し出している。
それはまるで、テツヤ氏の研ぎ澄まされた究極の味覚と技によって再び命が吹き込まれた食材たちに一期一会で対峙するかのような特別な体験だ。 実はコースの間は決してメニューが渡されない。渡されるのは最後のコーヒーとともに。次に何が供されるかはお楽しみという、このワクワク感もまた見事に食する者の高揚感を誘う。このちょっとしたテツヤ氏の策略によってテーブルでは会話も弾み、集う人々は皆、歓びとともにかけがえのない時間を共有する。食とともに人間同士がありのままの姿で触れ合うことのできる食空間を作りだすこと。これこそが、テツヤ流のテーブル・マジックなのだ。
といっても、テツヤ氏は日本人の料理人らしく、決して食の本質から逸脱することもなく、決して奇を衒うこともない。まさに正攻法の一本勝負だ。

TETSUYAʼS
自らワインや日本酒のプロデュースも手がけ、日本の食材の海外普及にも力を注ぐ。
「食いしん坊の僕や皆さんが食べたいと思うものをお出ししているだけですよ。食材が九割で、技術は一割ですね」と自らの料理について、テツヤ氏はこう評する。ご本人自身も正真正銘の食道楽だという。
「オーストラリアは広大な国土に熱帯から寒帯まであって、いわば世界の縮図みたいな国です。しかも、移民してきた人々が、必要に駆られてそれぞれに自国の食材を根付かせたという歴史があります。この国の成り立ちと食材の豊かさが枠にとらわれない自由な発想で料理を進化させた― 要するに、自然な形でのフュージョンを可能にしたんです。厨房でも徒弟制度がなく、皆がフラットな関係だから、若い料理人でも斬新な発想で一人ひとりの力を存分に発揮してくれるんです」
テツヤ氏は"モダン・オーストラリア"という言葉があまり好きではないという。自らの料理をフレンチ・ジャパニーズなどという枠に収めようともしない。出会った食材を何よりも大切にし、食する人々にとってストレートにおいしいと思えるものを食してもらいたいという思いが全てだからだ。だからこそテツヤ氏の料理にはトレンドも無い。
壮大なシンフォニーの後に続くエピローグ。ただ、ひたすら「おいしい」という余韻が心に響きわたる。
「料理というのは100%人に与えるもの」という一言で締めくくるテツヤ氏。誰もが母親の手料理の味を生涯忘れないように、素直に "おいしい"と感じる心は世界共通であることを改めて感じさせられた。

TETSUYAʼSTETSUYAʼSTETSUYAʼS

ラムロース、アーティチョークとパンプキンシードヨーグルトを添えて。(7皿目)

アブルーガの洋風茶碗蒸し。(1皿目)

スナッパー(真鯛の一種)のカルパッチョ。(2皿目)

TETSUYA'S(テツヤズ)
529 Kent Street, Sydney NSW
Tel. +61-2-9267-2900
www.tetsuyas.com

エピキュリアンたちの饗宴 Quay

自然からのインスパイア ― 素材と食感の絶妙なハーモニー ―

Quay

自然と食との幸福な出会い―。
オーストラリアならではの大地の恵みに限りない愛情を注ぎ、箱庭のような皿を描きだすピーター・ギルモア氏。
その優雅な一皿は、悠久の大地が育んだ自然の息吹をもたらす。

Peter Gilmore

Quay エグゼクティブシェフ
44歳。シドニーで生まれ育つ。幼い頃より多様な食文化に興味を持ち、16 歳で料理の道に入る。国内外で修業の後、メディアなどでも高い評価を受けるなど頭角を現す。2001年よりキーにおいて独自の料理スタイルをますます進化させている。

ミコノス島 Mykonosミコノス島 Mykonos

シドニーのベストレストランにふさわしい眺め。

りんごのカスタードとバニラ・アイスのハーモニー
"スノーエッグ"は一大センセーションを巻き起こした。

 シドニーハーバー、オペラハウス、ハーバーブリッジとシドニーの三大名所を見わたすその堂々たるロケーションが物語るように、12年連続オーストラリア版ミシュランガイドで三ツ星獲得をはじめ、数々のベストレストラン賞を獲得しているキー。エグゼクティブシェフのピーター・ギルモア氏はモダン・オーストラリア界のアイコン的な存在だ。
「自然からのインスパイア」をコンセプトに、オーストラリアにしかない食材の数々をアートともいえる領域にまで昇華させてしまう。レモンアスペン、レモンマートル、ワリガルと呼ばれる先住民アボリジニ固有のホウレンソウ...。ギルモア氏はこのような食材を用いてオーストラリアの悠久の大地が育んだ自然の息吹を皿にもたらす。
ギルモア氏のすごいところは、数種の素材のハーモニーと、対照的ともいえる多様な食感の妙味をバランスよく一つの皿に描きだしてしまうところだ。それは、まるで庭師が様々な花や樹を用いながらも整然とした一つの庭園を造り上げるかのようでもある。
もし、シェフにならなかったら?と問うと、すかさず「庭師」と答えたギルモア氏。氏のイマジネーションの中にはつねに幼い頃から描き続けた自然と食との幸せな出会いがある。伝統にとらわれないオーストラリア人気質と氏を取り囲む多様な食文化の影響がさらに花開かせた。
ギルモア氏の料理には、どこか懐かしさを感じさせる大地の匂いがある。幼い頃から様々な文化の香りに触れ、12歳になる頃にはすでに食材を求めて世界を旅したいという憧れを抱いていた少年時代。そんな氏の原点への思いが感じられるかのようだ。
と、その時、ふと少年のように目を輝かせたギルモア氏。飽くなき食材探しの旅路はまだまだ続きそうだ。

ミコノス島 Mykonosミコノス島 Mykonos

豚のほほ肉の燻製風味に炒り昆布や椎茸、麹パウダー、揚げた海苔を添えて。昆布や椎茸のだし汁を巧みに用いる手法も見事だ。

希少な数種のハーブに人参や豆の花を添えたサラダ。

Quay(キー)
Upper Level, Overseas Passenger Terminal,The Rocks, Sydney NSW
Tel. +61-2-9251-5600
www.quay.com.au

ワイン愛好家たちを魅了するオーストラリアワインの実力

自然からのインスパイア ― 素材と食感の絶妙なハーモニー ―

オーストラリアはワインにおいても先進国だ。
長い期間での熟成のポテンシャルがあるワインも多く、早いうちからお気に入りの一本を見出せるのも、愛好家にとっては一つの愉しみだ。
キーのヘッドソムリエ、アマンダ・ヤロップさんに、オーストラリアワインの魅力を聞いた。


オーストラリアはワインにおいても先進国だオーストラリアはワインにおいても先進国だオーストラリアはワインにおいても先進国だ

最高の眺めと食とともにオーストラリアのテロワールを味わってもらえるよう、国内ワインを勧めるというアマンダ・ヤロップさん。その知識と実力で国内では広く名を知られている。

ペンフォールズが170周年を記念して製造したBin 170 カリムナ・シラーズのインペリアル(6リットル)は、オークションで65,500豪ドル(約621万円)の値をつけた。

ペンフォールズVintage2008 Bin 95。特にこの2008年は、ワインスペクテーター誌でも100点 満点を獲得という快挙を成し遂げている。

オーストラリアはワインにおいても先進国だ
ヘンチキの"ヒル・オブ・グレース"。特に2006 年はシラーズ最高峰のグレートヴィンテージの一つと称される。本来の飲み頃は2026年とも言われるその息の長さもまた大いに期待される。

18世紀後半、イギリスやドイツなどヨーロッパからの移民たちが伝えたワイン製造の技術は、その広大な国土に分布する様々な気候風土に恵まれ、大きく発展する。
現在、約61の地域で生産されているが、特に南オーストラリア州のマクラーレンヴェールやバロッサバレー、そしてメルボルンのあるビクトリア州のヤラバレー、シドニーのあるニュー・サウス・ウェールズ州のハンターバレーなどが有名なワイン産地として知られている。
「オーストラリアのワインは特に、シラーズとカベルネの赤によって知られています。バロッサやマクラーレンヴェール、クナワラなどの有名な産地におけるヒーローワインも、シラーズやカベルネがほとんどです。シラーズは少し長期的な視点で飲み頃を待つのが良いかもしれません。ハンターバレーはセミヨン種の白が有名ですが、実はここもシラーズ種の赤が抜群です」
オーストラリアワインのもう一つの特徴は、醸造後のフレッシュな段階から飲めることだ。その分、その後の熟成を念頭にいれての価値というものも注目されてくることになる。長い期間での熟成のポテンシャルのあるワインが見出せるのもワイン愛好家にとっては大変興味深いところだ。特に投資対象として注目される銘柄について尋ねてみた。
「ベンチマーク的な存在として世界的に知られているのは南オーストラリア州アデーレード近郊のマギルエステートのペンフォールズ"グレンジ"や、バロッサバレー近郊のエデンバレーのヘンチキ"ヒル・オブ・グレース"などですが、その他にもカベルネ二種・メルロー・プチヴェルド・マルベックの五種類がブレンドされたヤラバレーの"クインテット"やハンターバレーの"ブロークンウッド"などの注目株がいくつかあります。また、日本でも知られているバロッサバレー近郊ヤルンバのカベルネとシラーズのブレンド、"ザ・シグニチャー"もお勧めします」
オーストラリアのワインを語るにおいて避けて通れないのが、何といっても "ペンフォールズ・グレンジ"だ。1995年にワインスペクテーター誌において「ペンフォールズ・グレンジ1990は世界一の赤ワインである」
とコメントされて以来、ワイン愛好家垂涎の銘柄に躍り出る。
19世紀後半に英国人の医師が治療用の薬の代わりに製造したワインが醸造の改良技術を重ねて発展し、"グレンジ・ハーミテージ"という幻のワインを生み出した。古い樹から摘まれたシラーズのみによって作られるワインは、5年から20年ほど寝かすことで、よりおいしいワインに仕上がるという。若く将来性のある優良ワインがひしめくオーストラリアワインの中でも、別格の風格と実力を誇るのがこの銘柄だ。投資的な意味合いよりも、むしろ、時を経て深みを増す味わいにこそ価値が見出される一本といえる。
「価値のあるワインはほとんど国内で消費されてしまい、あまり輸出されないのが残念」と、ヤロップさん。ぜひオーストラリアを旅して、とっておきの一本を見つけたいものだ。